“Diligence is the mother of good fortune.”
「ゴールデンウィーク」
あゝ何という懐かしい響き。さて最後に経験したのは…あれは20歳のころ、東京の蕎麦屋で働いていたとき。といっても年末と双璧をなす大盛況のまさにゴールデンウィークは、当然というか1日たりとも休みはなかった。そうそう、仕事上がりの銭湯で腰掛けた瞬間に眠り込んでしまったのも確かこのときだ。
“What a wealthy country!”
そして今の日本。やたらと休日が増えている。海の日? 山の日? 国民の休日とは何? 加えて今年のゴールデンウィークに至ってはなんと10連休。さすがのレジャー好きアメリカ人もナショナルホリデーが1週間続くことなど想像もつかないだろう。日本はいつのまにこんな休みだらけになってしまったのか。ぼくが育ったかつての日本という国は世界一勤勉な国として知られていた。ちょうど高度成長期の終盤あたり、飛ぶ鳥を落とす勢いで日本経済が発展していたころだ。
「働くことは素晴らしい」
この日本の姿勢こそが未来永劫発展し続ける日本を支えていくと皆が信じていただろう。しかし平成に移り変わるとバブルが弾け、時を同じくしてぼくは日本を離れた。
「バケーションはいつがいい?」
夏が近づくころ、アメリカの職場ではボスがスタッフにこう訊いてまわる。この国は労働時間においてはシビアだが、そのわりにホリデーは意外と少ない。しかしそういいながら休みはしっかり取っている。そのカラクリは「交代で休む」習慣ができているからではないだろうか。ボスは仕事に支障がないよう部下の休みを調整する。それもマネジメントの重要な仕事のひとつ。同僚に負担は掛かるがそこは「お互い様」で、結局は何とかなってしまうものだ。
一方で日本のシステムは、どうもこの辺りがうまくできないような古い風習が残っているため、祝日で辻褄を合わせているのではなかろうか。世界有数の産業国になった日本はそのころの「皆同じ」という単一的な習慣からいまだ抜け出せていない気もする。「働く時間」と「休む時間」の取り方は仕事内容、部署、人によって自ずと違ってくるはず。こういうところはアメリカに参考にすると良いのかもしれない。
“Diligence is the mother of good fortune.”
「勤勉は幸運の母」
一生懸命働くことは幸せなことだ。ただそこは「盲目に」でなく「上手に」働ける環境があれば、祝日に頼り過ぎなくともバケーションを楽しむことができるのではないだろうか。
おわり
Jay
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理シェフなどの経験を活かし「食と健康の未来」を追求しながら「食と文化のつながり」を探求する。2018年にニューヨークから日本へ拠点を移す。