クラウス・フォン・ビューローさん、92歳 妻殺人未遂で再審無罪、映画化も

 大富豪の妻を殺そうとしたとして1982年に有罪判決を受けた後、再審で無罪となったクラウス・フォン・ビューローさんが5月25日、ロンドンの自宅で亡くなっていたことが分かった。92歳だった。ニューヨークタイムズが同30日、報じた。
 ビューローさんの妻マーサさんは、米東海岸や中西部を拠点にするガス電力会社の創業者の娘。自身の年収が当時の金額で推定3500万ドルだったのに加え、前夫だったオーストリアの皇太子から7500万ドルの遺産を相続していた。事件当時、ビューローさんは無職。マーサさんと共にマンハッタン区5番街の「宮殿のような」邸宅に暮らしていた。
 最初の事件は79年12月に発生。ロードアイランド州ニューポート市にあった別宅で、低血糖症を患っていたマーサさんが昏睡状態で発見された。一時は回復したが、80年12月に昏睡状態で再度発見された。マーサさんにインシュリンを大量に注射し殺害しようとしたとして司法当局はビューローさんを起訴。82年、同市の裁判所で有罪、禁錮30年を言い渡された。しかし、ハーバード大教授のアラン・ダーショビッツ弁護士を迎えた85年、再審で逆転無罪となった。
 事件は社会的注目を浴び、ダーショビッツ弁護士が事件について書いた本はジェレミー・アイアンズ主演で映画化(邦題:運命の逆転)。アイアンズはアカデミー賞主演男優賞を受賞した。マーサさんは意識が戻らないまま、2008年に亡くなった。