1960年代から70年代にマンハッタン区ハーレムなどを拠点に暗躍したヘロイン密売組織の首領、フランク・ルーカス元受刑者が5月30日、亡くなった。88歳だった。ニューヨークタイムズなどが報じた。麻薬の密売でのし上がった人生は、デンゼル・ワシントン主演の2007年の映画「アメリカンギャングスター」のモデルにもなった。
1930年9月ノースカロライナ州ラグランジ生まれ。15歳で400ドルを強奪しニューヨーク市へ逃亡、ハーレムで麻薬の密売を始めた。路上で白昼、密売の競争相手の頭に4発弾丸を打ち込んだ66年の蛮行で一躍有名となり「闇世界」を支配。当時市の密売市場を独占していたマフィアからヘロインを購入すると1キロ当たり5万ドルしたことから、新たな供給ルートを開拓した。自らタイ、ビルマ、ラオスの国境にある「黄金の三角地帯」に飛び、現地の人間と原材料であるケシの栽培を開始。1キロ当たり4300ドルで132キロ仕入れた。末端価格は30万ドルに上った。ヘロインはベトナム戦争で戦死した米兵の棺を2重底にして密輸したという。
最盛時には1日に100万ドルを荒稼ぎ。75年に逮捕され、連邦麻薬取締法違反で有罪となり禁錮70年の実刑判決を受けたが、賄賂を受け取った警官などの情報を提供する司法取引により7年で出所した。