マンハッタン区のメトロポリタン美術館(MET)は「世界難民の日」の今月20日まで、20世紀の仏画家、マルク・シャガール(1887〜1985年)の「恋人たち」に灰色の布をかぶせて展示している。難民による貢献がなかった場合どうなるかを知らしめるのが目的だ。METが17日、発表した。
「恋人たち」(1913〜14年)は、シャガールと当時の婚約者、ベラ・ローゼンフェルトが抱擁している姿が描かれている。シャガールは1940年にナチス・ドイツがフランスを侵攻した際、同地から逃れた難民1500人のうちの1人。後に国際救援委員会(IRC)となった支援団体の援助によりニューヨークに亡命した。MET館長のマックス・ホーレイン氏は声明で「METが難民を歓迎し、難民が成し遂げた過去と現在の成果、世界への貢献を祝うことに迷いはない」と述べている。
同区5番街の本館とマジソン街の新館「METブロイヤー」では他に難民体験のある芸術家の作品にも黄色のラベルを付けて展示。ロシア系ユダヤ人でニューヨークでも活動したマーク・ロスコ(1903〜70年)、第一次世界大戦に衛生兵として従軍したマックス・ベックマン(1884〜1950年)、ドイツに生まれフランスに帰化したマックス・エルンスト(1891〜1976年)などの作品だ。
WNYCが18日、IRCのデータとして報じたところによると、2017年の難民や強制移住は6850万人。迫害から逃れて支援を求める人の数は第2次世界大戦以降、最多となっている。加えて受け入れの門戸は狭くなるばかり。IRC委員長のデビッド・ミリバンド氏はWNYCに「難民に対する風当たりは非常に強い。世界難民の日を契機に、苦境だけでなく貢献にも目を向けてほしい」と説明した。