瘢痕(傷痕)がもたらす体への影響
けがや手術の後、局部的痛みがなくなって安心していませんか? 痛みは体が発する危険信号ですから、患部の痛みがなくなるのは良いことです。しかし痛みがなくなったとはいえ、正常な体の動きが戻っているとは断言できません。
外傷を負うと炎症が起こり、体内で治癒が始まります。その過程では、コラーゲンが損傷部の組織を修復します。損傷の範囲に応じて体がコラーゲンを産生し修復がなされ、最終的に瘢痕(傷痕)が残ります。この瘢痕は損傷部へのコラーゲンの増幅によって形成されるものですが、その配置はバラバラで、修復過程でコラーゲンが周りの組織と癒着することがあります。単純に「くっつく」ということです。損傷部周辺が皮膚、筋膜、筋肉、腱、靭帯、また骨と癒着する場合があります。
コラーゲンの配列の異常や癒着は、体を動かすことにより患部が伸張され弾力性が生まれ、損傷前に近い状態へと戻っていきます。しかし、けがに伴う炎症期の初期は痛みがあるため体を動かせません。痛みをかばう動きを続けると正常なコラーゲンの伸長がなされず、配列が元に戻らないこともあります。
筋肉の癒着が生じると、筋肉の本来の伸張性や張力が変化し、本来の機能を果たせなくなります。これは体の動きにも影響します。
手術の傷痕も同じです。手術も体への外傷であり、その修復過程で瘢痕が生じます。一般的な盲腸の手術であっても、患部の癒着が生じると右下腹部の組織の伸張性が低下し、右股関節の伸展(後ろへの動作)に悪影響を与え、歩行時に右の足を蹴る動作がしにくくなります。これは臀筋の筋力低下につながり、背筋にも影響を及ぼしかねません。
癒着が長く続いた場合、患部の瘢痕を手でほぐす治療が必要です。この際、癒着がもたらす制限部位や方向、深さを特定して解放することで、最大限の治療効果がもたらされます。ファンクフィジオでは瘢痕に対するアプローチも行っています。心当たりのある人は、まずはご連絡ください。
藤井よし
カリフォルニア大学(サンフランシスコ校)理学療法学博士課程修了。米国でも数少ない米国整形徒手療法学会(AAOMPT)のフェローシップ修了。顎関節などを専門とする。
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