昔から食と健康に興味があり、ニューヨークでヘルスカウンセラーの資格を取るにあたりさまざまな健康法について勉強したのが10年ほど前。マクロビ、アーユルベーダ、漢方、アンチエイジング…。それと同時に食事と関連した健康法を次々と実践した。
「結局、どの方法が一番いいですか?」
資格取得後、定期的に開催していた健康セミナーの受講者からしばしばこのような質問を受けた。まあ、その気持ちも分かる。がしかし、こと健康に関してはどれが良いというより、まずはこの質問自体を考え直した方が良い。
“Bio-individuality”
健康というものを捉えるうえで、何が目的かはさておき「個人差」ということを念頭に置くことは大切であり、例えば実践本と同じようにやっても効果がないというのは、その方法が自分には合っていないということだ。なので、自分に合った方法を探し、さらに身体に合うようカスタマイズするという過程がじつはとても重要で、そしてそれが長い道のりになる。しかしそれでも、今の世の中ではそんな悠長にしていられない人も多いだろう。そんな人にちょっと良い方法があるにはある。それが、
“Fasting”
つまり断食。「え、これって痩せる究極の方法でしょ」と思うかもしれない。確かにそれもなくはないのだが、あくまでも二次的結果。ではファスティングの一番の健康効果は何か? 例えば病気やけがをしたとき、食欲がなくなることはよくある。ただ、なぜ食欲がなくなるのかを知っている人は意外と少ない。答えは、空腹の方が治りが早いからだ。簡単に言うと、断食とは多大なエネルギーを必要とする「消化」のシステムを一時停止し、代わりに「治癒」のシステムをオンにさせる。つまり、「空腹」という時間は自己治癒力が旺盛に働く時間でもあるのだ。
ただし、一つ気を付けてほしいのはこの方法には危険が伴うということ。ひとくちに断食といってもジューシングや減食などから、水以外何も口にしないハードな方法まである。そして何日間実践するかなどさまざまなやり方がある。摂取カロリーが低いほど、実践期間が長いほど効果も出やすいが、同時に難易度や危険度も上がる。なので、知識や経験もなくいきなり自分で断食することは絶対に避けた方が良い。米国でファスティングを行うときは通常、医者やカウンセラーなどの指導の下に行われており、たぶんそれは日本も同じではなかろうか。あ、いや、ちょいと wait a minute. そうそう他にも手があるじゃないか…。お寺だ。
つづく
Jay
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理シェフなどの経験を活かし「食と健康の未来」を追求しながら「食と文化のつながり」を探求する。2018年にニューヨークから日本へ拠点を移す。