連載240 山田順の「週刊:未来地図」 政治家も有権者もメディアも日本はどうでもいいのか?(上)“ 無関心” 参議院選挙に思うこと

 今週の日曜日、7月21日は参議院選挙の投票日である。ところが、全然、そんな雰囲気はない。本当に選挙があるのかと疑いたくなるくらい、誰もが無関心である。マスコミ報道も選挙をほとんど取り上げていない。
 そこで、いったいなぜこんな状況になっているのか? と考えてみた。といっても、まとまった考えではないので、今回の選挙で疑問に思うこと、興味深いことなどをいくつか取り上げた。日本を考えるうえで参考になればと思う。

なぜ、若者たちは選挙に関心がないのか?

 「興味がない」「入れたい人がいない」「誰に入れればいいのか」ーーそんなふうに言われると、答えようがない。もちろん、選挙はそんなものではない。結婚と違って、理想の男性を待っていても仕方ないのだ。いま、この時点で、なにかを選択しなければならない。それが、選挙だと思う。
 しかし、そんなふうにはほとんどの人が思わず、自分と関係ないと無関心を決め込んでいる。これが、毎回、繰り返されているのが、日本の選挙ではないだろうか? 
 今回の参議院選は、とくに無関心がはなはだしい。
 ネット空間では、反安倍、親安倍、ネトサヨ、ネトウヨ、極右、極左、ネトサポ、右、左、保守、革新―などが、激しく罵り合っているようだが、マスメディアとリアル世界は静かそのものだ。
 先日、新宿駅西口で、自民党候補たちの演説をしばらく聞いていた。選挙カーの上に、世耕弘成、三原じゅん子など有名議員が次々に登場したが、メディアも来ていないうえ、それほど人は集まっていなかった。しかも、やって来た若者たちは、スマホで写真を撮るだけで、撮り終わるとすぐに立ち去って行った。
 いつも言われるが、若者たちはなぜ、ここまで選挙に“無関心”なのだろうか?
 自分の若い頃を思い出せば、いまの20代、30代に文句を言えるわけがない。
 しかし、時代を考えると、バブルで景気がよかったときといまでは、若い世代が置かれている状況が違う。誰が見ても、いまの20代、30代は残酷な時代を生きている。
 それなのに、いまの状況を変えていくのは国家レベルでは選挙しかないのに、まるで関心がないのはなぜなのだろうか。
 直近の参院選で、若者の投票率を見ると、絶望的に低い。18歳選挙権が初めて適用された2016年の参議院選を見ると、全有権者の平均投票率が54.7%だったなかで、18~19歳の投票率は46.78%、20~24歳は33.21%、25~29歳は37.91%となっている。投票に行くのは3人1人という、ひどい状況だ。
 その一方で、40歳~79歳では、各世代とも軒並み50%超え。もっとも高かったのは、70~74歳の73.67%だった。
 この国は、完全に“老人天国”になってしまった。

「若者よ、選挙に行くな」動画が話題に!

 若者の無関心に挑戦するように「若者よ、選挙に行くな」と題した動画が話題だというので、さっそく私も見てみた。
 単純な動画で、3人の人物が、カメラに向かってこう言っている。
 「年金が破綻する? 関係ないわ。だって私は貰えているもん」
 「教育予算が減っている? その分、医療費に回してもらえるからありがたいよ」
 「地球温暖化? 20年、30年先の話なんて知らないわ」
 さらに3人は、こう言う。
 「年金を払いたくない。残業は嫌だ。給料が下がった。匿名でよくつぶやいているね」「でもあなたたちは選挙には行かない」「だから私たちが政治を動かしているの」「あなたたち若者は存在しない人」「私たちは選挙に行く」「これでも、あなたは 選挙に行きませんか」
 この動画をつくったのは、芸人の「たかまつなな」さん。すでに30万回以上再生されているという。もちろん、「選挙に行くな」は逆説で、若者たちへ投票を呼びかけるのが目的だ。
 そういえば、同じような動画が、昨年のアメリカの中間選挙でも登場している。「若者よ、投票しないでくれ」と、老人たちが若者たちに、次のように呼びかけるものだった。
 「金持ちの税金がカットされただろ?最高だね!オレは金持ちだから」
 「学校での銃撃事件は悲しいね。でも、学校にはもう50年も行っていないからさ。その命が大切かなんて、考えていられない」
 「私は投票するよ」

日本の選挙の投票の仕方はガラパゴス

 選挙報道が低調ななか、気になる記事があった。毎日新聞(7月14日)の記事で、「日本式投票はガラパゴス 他国の主流は『記号式』」というもの。
 日本の選挙では、投票用紙に候補者の名前を書く。しかし、他の国々では、投票用紙に印を付ける「記号式」が主流で、日本の投票の仕方は少数派だというのだ。
 候補者の名前を書かせる「自書式」の場合、投票用紙に候補者の氏名を印刷する必要がないので、事前に投票用紙を準備できるといったメリットがある。しかし、デメリットもある。それは、名前の書き間違えで投票が無効になることだ。
 日本でも1994年に公選法が改正され、記号式が認められた時期があったが、自民党から「政治家は名前を書いてもらうのが仕事」といった声が高まり、国政選挙では1度も実現していないという。地方選挙では、自治体が条例を制定すれば可能で、千葉県八千代市など一部の自治体だけが首長選で採用しているそうだ。
 もう1つ、記号式が浸透しない理由として、「候補者名の並び順で先頭が有利、後ろは不利」という意見が出たからだという。
 この記事を読んで、私が思ったのは、日本は一刻も早く記号式を導入し、さらに、ネット投票も実現させるべきだということ。選挙のたびに、学校の体育館などに投票所が設置され、投票用紙と鉛筆と投票箱が置かれ、選挙管理員がずらりと並んでいる。この光景は本当に時代錯誤だ。
 記号式、ネット投票を採用すれば、投票率は確実に上がるだろう。
 さらに、自書式のせいで、候補者が自分の名前を漢字でなく平仮名で届け出るようになった。これは、日本の文化と、有権者をバカにしていないだろうか? こういうことは即刻やめてもらいたいと思う。投票所に行って、候補者の名前をひらがなで書くたびに、私はものすごい違和感を感じてきた。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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