連載243 山田順の「週刊:未来地図」 政治家も有権者もメディアも日本はどうでもいいのか?(完) “無関心” 参議院選挙に思うこと

WP紙の大統領選報道の反省記事の教訓

 ところで、話をアメリカに飛ばすと、選挙報道において、メディアが大いに反省したことがある。
 2017年1月7日、ワシントン・ポスト(WP)紙は、大統領選挙の反省記事を掲載した。その内容は、大統領選挙で大手メディアは、「公共の利益」(public interest)を図ることに失敗したというもの。また、選挙予測もヒラリー有利としてしまったことを謝っている。
 「公平さ」の名の下に、些細な欠点や間違いばかりに焦点を当て過ぎ、その結果、トランプのような“人格欠陥者”を大統領にしてしまったというのだ。
 選挙報道では、競馬のようにレースばかりに注目してはいけない。本当に伝えるべきこと、市民の関心事を考え、有権者が知りたいこと、知る必要のあることに答えていかねばならない。それが、できなかったと反省したのだった。
 もちろん、これは、日本にも通じることだ。

NHKの予測では投票率52で過去最低

 選挙戦終盤の、メディアの世論調査は、ほぼ「現状維持」と出た。
 たとえば、朝日新聞が13、14日に実施した調査では、比例区の投票先は、自民が35%(6月調査は40%)ともっとも多く、立憲民主は12%(同13%)、公明、共産、日本維新の会はいずれも6%だった。
 しかし、有権者の半数以上は無党派層。そこで、無党派層に限ると、自民16%、立憲12%、維新6%の順。いちばん多いのが、「答えない・わからない」で、こういう人たちが5割以上だった。
 NHKでは、ウエブのNHK政治マガジンで「投票率ズバリ当てます」という記事を掲載し、投票率も予想した。
 それによると、各種データから出た数字は52%台。前回の54.70%を下回った。選挙に「非常に関心がある」という人を年代別にみると、前回の平成28年選挙と比べ、40代、60代、70代の幅広い年代で減っているからだという。
 選挙前の時点で、投票先を決めていない有権者は、その後、意中の政党を決めて投票する人もいたが、多くは最終的に投票に行かなかった。NHKの予測は当たったのだ。
 最近、つくづく思うのは、人は一度ものを信じると、よほどのことがないとそれを曲げないということ。同じく、一度なにかを好きになると、そればかりやったり、食べたりするということ。
 政治も同じだ。日本では、政治思想による対立、それとは逆の思想や党派を超えて連携のどちらも存在しないから、ほぼなにも変わらない。
         (了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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