米移民局(USCIS)は24日、米国に巨額の投資をした人に永住権を与える制度(EB-5)で、要件となる最低投資額の引き上げを発表した。「投資ビザ」のハードルが上がり、米国永住を目指す外国人投資家にとって痛手となる一方で、米国内での開発にも影響が及びそうだ。ニューヨーク市も例外ではない。ウォール・ストリート・ジャーナルが28日、報じた。
EB-5は米国の雇用拡大を目的としたもの。現行で永住権を与えるのに必要な最低投資額は、失業率の高い「雇用創出ターゲット地域(TEA)」に50万ドル(約5400万円)、それ以外の地域に100万ドル(約1億900万円)。新規定ではTEAに90万ドル(約9800万円)、それ以外の地域で180万ドル(約1億9600万円)の投資が必要となる。施行は11月21日。
同紙によると、これまでは州政府がTEAの区割りを行っていたため、失業率が低い富裕層地域でも対象地域に指定することができた。米国側の開発業者にとっても、EB-5による投資は都合良く高級高層ビルの開発などに充てることができたという。ニューヨーク市内でも、マンハッタン区西34丁目のハドソンヤードや西57丁目の超高層居住ビル、セントラルパークタワーの開発などがそうだ。ハドソンヤード開発には同制度を使って10億ドル以上の投資を受けたという。しかし新規定の施行後は、国土安全保障省(DHS)が公平に区割りする。
なお、EB-5は1つの国の国民に1年間に発給される永住権の数に上限があり、ここ数年は減少傾向にある。最大投資国である中国人申請者の待ち時間が長いそうだ。同紙がEB-5投資の業界団体、インベストのデータとして報じたところによると、米企業が昨年、EB-5により新たに受けた投資の額は29億ドル(約3200億円)で、2016年の64億ドル(約7000億円)の半分以下だった。