弁護士スティーブン・エプステインの知ってて安心! 法律指南 Vol. 51 ◆離婚を考え始めたら

 ニューヨーク州では、婚姻関係が破綻した場合、配偶者に明らかな落ち度がなくても離婚を申請することができます。これを「無過失離婚」と呼びます。申請の際、配偶者の不正行為や虐待を立証することが常に必要というわけではありません。
 裁判所に無過失離婚を認めてもらうためには、夫婦関係の修復がつかない旨を直訴する文書を提出する必要があります。これに加えて、財産分与、医療保険、配偶者へのサポート、養育費、親権、そしてその他の金銭問題など、離婚に関するすべての問題が解決されたことを証明しなければなりません。
 一方で、相手の過失を主張することによって、離婚を申請することもできます。相手方が離婚に同意しない場合や、離婚することに同意していたとしても、財産分与、親権、配偶者のサポート、金銭問題、その他の問題に関する事柄に同意できなかった場合は過失に基づく申請をします。
 離婚申請の理由には以下のようなものがあります。

①夫婦が一緒に生活を続けることが危険である、もしくは不適切で残酷で非人道的な扱いを受ける(身体的または精神的虐待)
②少なくとも1年以上の婚姻関係の破綻(夫婦の営みがないなど)
③婚姻後3年以上の服役
④浮気
⑤合意または裁判所命令に従って別居している

 過失に基づく離婚申請は、裁判が長期に及ぶことが少なくありません。結婚生活における苦悩の日々や恥辱的な内容を話さなくてはならないこともあります。両当事者と子どもにとって、精神的な負担となるでしょう。そのため、過失に基づく離婚を申し立てるべきかどうか、また場合によっては長い法廷闘争の余地があるかどうかを慎重に検討することが重要です。
 離婚せずに、別居するという選択肢もあります。
 別居を選択した場合でも、夫婦が同意する「別居契約」を検討する必要があります。契約の中にはどちらがどの請求書内容の支払いをするか、誰が子どもと一緒に暮らすか、養育費がどのように支払われるか、面会交流はどうするか、財産や保険の問題など、夫婦が望む項目を自由に含めることができます。両当事者は、別居契約の全ての内容に同意しなければならず、公証人の面前で署名し、承認してもらうことが必要です。
 別居契約は法的拘束力を持ち、違反が発覚した場合は訴訟を起こせます。別居契約は、離婚申請の際の理由の1つにも含まれます。
 離婚について質問がある場合は、ぜひ相談にいらしてください。

Steven W. Epstein スティーブン・エプステイン弁護士
ブランディーズ大学、ニューヨーク・ロースクール卒。18歳から法律事務所で働き始め、2003年まで弁護士組合員として幅広い分野の訴訟を担当。04年に独立し、「Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所」を設立した。取扱い業務は、民事訴訟、会社法(設立、契約)、家庭法(離婚)、刑事訴訟など、多岐に渡る。また、NY市行政裁判所にて非常勤審判官も務めている。

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