ニューヨーク湾にクジラなどの海洋生物が戻っている。市環境保護局(DEP)はこのほど、同湾の水質が過去110年間で最も優れた状態にあるとの報告をまとめた。ニューヨークポストが10日、報じた。
ニューヨーク水族館などで学芸員を務めたポール・シースウエルダさん(77)は2010年、市の沖合で、推定重量6万6000トンのザトウクジラが目撃されたと聞いて「引退」を返上。非営利団体「ゴッサムホエール」を設立し、クジラウオッチングのツアーを組んでいる。
ニューヨーク湾で確認したクジラは11年には5頭だけだったが、昨年は209頭。「今年はまだ8月上旬というのに、すでに268頭だ!」と興奮気味だ。
DEPはクジラ急増の理由を、水質の改善に伴いエサとなるメンハーデン(ニシン科の魚)が増えたためと指摘。その他にもニューヨーク湾に注ぐハドソン川では8.5インチのカキが見つかり、14フィートのチョウザメの姿が音声探知機で確認されている。クイーンズ大学の海洋学者、ジョン・ウォルドマンさんは、「市内最大の自然環境はセントラルパークではなく、ニューヨーク湾だ」と手放しで評価した。
19世紀、市内の人口は6万人から400万人に膨張。それとともにニューヨーク湾には未処理の下水が流れ込み水質は急激に悪化した。かつてはヘドロが10フィート(約3メートル)も堆積し、海洋生物が生きられる環境ではなかったという。