グランドセントラル駅から徒歩4分と至便の立地にあるフィジカルセラピー(理学療法)専門のクリニック、ファンクフィジオ。同クリニックではけがや手術後の機能回復をはじめ、腰痛や四十肩などの治療以外にもさまざまな専門的治療を行なっている。産前産後の妊婦のケアや尿もれなどの治療を専門に行うニディ・シャルマ先生に聞いた。
Q.妊娠・出産に伴い、妊産婦の体にはさまざまな変化と症状が現れますが、産前によくみられる症状について教えてください。
A 妊婦が抱える主な痛みは3つあります。①腰痛、②下腹部の痛み、③下肢の関節痛です。腰痛の原因は、お腹の赤ちゃんの成長と共にお母さんの背中の筋肉にかかる負担が大きくなること。下腹部の筋肉が伸びて弱くなり、背中や背骨を十分に支えられなくなること。妊娠中に分泌が増えるホルモンによって骨盤周辺の靭帯や関節が緩み、その結果、骨盤にゆがみができることです。下腹部の痛み、いわゆる骨盤帯痛は、妊娠中に子宮が大きくなるにつれ、子宮を支える靭帯が伸びることにより起こります。下肢の関節の痛みは腹部の筋力低下や、下肢への体重負担が原因です。これらの痛み以外に、体内の水分増加による神経経路の圧迫から起きる手指・足指のしびれ、下肢のむくみなどがあります。これは、妊娠後期に大きくなった子宮が血管を圧迫し、血のめぐりが悪くなることで体内の水分が血管から漏れ出し周辺組織に溜まり引き起こされます。
Q.腰痛にはどのような治療をするのですか?
A 骨盤の底で臓器を支える骨盤底筋群、呼吸をするときに使う横隔膜、体幹深層筋(コアマッスル)の3つの筋肉を鍛えるエクササイズを指導します。横隔膜を鍛えるのは出産時の骨盤底の伸張(プッシュ)と弛緩(リリース)のコツを掴むのにも有効です。骨盤底筋群を鍛えるエクササイズ(後述)は産後の女性に多い「尿もれ」を予防する他、分娩時に赤ちゃんが産道を通りやすくします。
Q.関節痛やむくみはどうしたら改善しますか?
A 日常の動作や睡眠時の姿勢を工夫することで、関節痛やむくみは随分と良くなります。例えば足を心臓より高く上げる、心臓に血液を送る大静脈を圧迫しないように横向きで眠る、腕を適切な位置に置くなどです。骨盤の痛みも睡眠時の姿勢を適切に保つことで改善します。当院では妊婦1人ひとりの症状に合わせて正しい姿勢の保ち方を指導します。
Q.産後も腰痛を訴えるお母さんが多いと聞きます。原因と対策は?
A 産後の腰痛は、大きく分けて2つあります。1つ目は、育児に関わるさまざまな動作が原因のもの。もう1つは、妊娠中におへそを中心に筋肉が左右に広がった腹直筋離開(ふくちょくきんりかい)が原因のものです。育児中の姿勢が原因の場合は、赤ちゃんの正しい持ち上げ方、抱き方の他、授乳時の姿勢も指導します。腹直筋離開の場合は、広がってしまった筋肉を元に戻すエクササイズをします。割れた筋肉では体を支えることができませんよね。腰痛緩和には、産前と同様、姿勢を矯正し、エクササイズによってコアマッスルと骨盤底筋群、横隔膜を鍛えるのが一番です。
Q.その他、産後はどんな症状が出ますか?
A 先ほど出てきた尿もれと骨盤臓器脱です。尿もれは、咳をしたりクシャミをした瞬間や赤ちゃんを抱き上げたときなど腹圧がかかったときに、自分の意思とは関係なく尿が出てしまうものです。骨盤臓器脱は、子宮や膀胱、直腸が膣の中に落ち込み、外に飛び出す症状です。これも出産時に骨盤底筋群が強く引き伸ばされ、伸びてしまうことにより、臓器が支えられなくなって起きます。尿もれと骨盤臓器脱には骨盤底筋群を鍛えるエクササイズを指導します。
Q.どんなエクササイズですか?
A 「ケーゲル体操」 と呼ばれるもので、仰向けでも立っていても座っていても、赤ちゃんを抱きながら、あるいは家事をしながらどこででもできる体操です。産後72時間後から始め、最低3カ月は継続するのが理想的とされています。ケーゲル体操についての情報はインターネット上にあふれていますが、正しい方法で行なっている人は少ないようです。というのも外からではこの筋肉群は見ることができないのでほとんどの人が間違って行い、実際の効果が得られていない、または逆に状態を悪化させてしまっているというのが私の経験です。間違いを防ぐためにはきちんとした指導を受けると同時にしっかりと理解し、正しい筋肉群を使えるようになっていかないといけません。当院では膣内センサーと超音波画像機を使い正しい筋肉を使えているかを確認しながら指導してきます。
Q.具体的にはどうするのですか?
A 膣内にセンサーを挿入し、骨盤底筋群の状態を検査してから指導します。また、超音波画像機で外からは見えないコアマッスルを画像化し、筋肉の収縮を目で確認しながら指導します。こうしたツールは正しいエクササイズを指導するうえで不可欠ではないでしょうか。当院にはこのような専門の治療機がそろっているので、どの部分に問題があるかを把握した上で、適切な治療が提供できます。
妊娠・出産により女性の体は大きな影響を受けます。痛みや不快な症状があったら、我慢せずに専門家に相談しましょう。
ニディ・シャルマ
DPT, WCS, OCS
IP University in India卒業。The Herman and Wallace Pelvic Health Instituteで骨盤学を専攻。骨盤の歪み、骨盤底筋問題、産前産後の尿もれなど骨盤周りの問題に幅広く対応する骨盤リハビリの専門家。米国でも数少ないBoard Certified Women’s Health Clinical Specialist(WCS)の資格を持つ。
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