行き場を失ったプラごみをどうしている?
プラごみの捨て場を失ったのは、日本だけではない。アメリカも同じだ。2018年1月まで、アメリカの廃プラは主に中国に輸出されていた。しかし、前記したように、中国が受け入れを停止したため、アメリカのプラごみは行き場を失った。当初は、東南アジア諸国に回されたが、いまや、それもできなくなりつつある。
その結果、なにが起こっただろうか?
アメリカの各自治体は、自分のところでごみを処理するほかなくなり、その費用の高騰から、リサイクルを中止するところが続出したのである。
リサイクル業者は、自治体から費用の捻出を要求し、それに自治体が応じられなくなったのである。大気汚染の懸念によりアメリカでは、一般的に焼却炉は使用されていない。そのため、たとえば、ニューヨーク州では、ニュージャージーなど近隣州の埋立地にごみを運んで廃棄しているが、これもいまや限界に達しようとしている。
日本も同じだが、日本の場合は焼却設備が多いため、埋め立て廃棄しつつも、できる限り燃やしに燃やしている。ただし、これはただ燃やすだけで、リサイクルではない。
なぜなら、汚れがついていたり異物が混じっていたりすると、輸送や選別・処理に手間と費用かかるうえ、リサイクル製品の品質が落ちて使い物にならなくなるからだ。
中国の輸入禁止措置以後、日本政府は、各自治体に一時的に保管できるプラごみの量を2倍に引き上げ、産業用のプラごみを焼却炉で燃やせるように要請してきた。これは、緊急措置であり、抜本的な解決策ではない。
2050年、プラごみは全世界の魚の量を上回る
このように、海洋汚染という重大な環境問題を引き起こすプラごみについて見てくれば、この問題が、地球温暖化問題より深刻だとは思わないだろうか?
プラごみによる海洋汚染問題は、今年の6月、日本で行われたG20でも、一つのテーマとして議論された。
しかし、各国とも解決には問題が多過ぎて、どうしていいか頭を悩ませているだけである。紙ストローに切り替えるぐらいで済む問題ではない。リサイクルがもっとも環境にやさしいとされるが、これすらも矛盾がある。なぜなら、プラごみはいったん焼却しなければならず、そうすると大量の燃料が必要となる。温室効果ガスを大量に排出し、温暖化対策に逆行する。
しかも、国連でいま行われているのは、もはや温暖化しているかしないかという科学的なアプローチはすっ飛ばされ、各国がいかにCO2を削減するかという駆け引きにすぎない。
しかも、「パリ協定」が実施されれば、日本は年間4兆円ほど、温暖化防止のために途上国に援助しなければならない。そんな大金をCO2削減に使うなら、貧しい人々、難民を救うために使ったほうが、よほどマシではないだろうか。もちろん、プラごみ対策に使ったほうがいいのは言うまでもない。
1人当たりのパッケージ用プラごみの発生量は、アメリカが世界一、日本が2番目である。2050年には、マイクロプラスチックは全世界の魚の数を上回るといわれている。
現在のペースでゴミが増え続ければ、地球はごみで埋もれ、ゴミに含まれる有害物質で環境汚染は加速する。温暖化は抑えられても、地球がごみの山になったら、どうするというのだろうか?
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com