ジミー・スパイサーさん、61歳 「物語るラップ」の先駆者

 物語を作り韻を踏んで歌い上げる「物語るラップ」の先駆者として知られるジミー・スパイサーさんが9月27日、ブルックリン区の病院で死去した。61歳だった。昨年夏にがんと診断され、クラウドファンディングで治療費を募っていた。ニューヨークタイムズが同30日、報じた。
 1958年、同区でピアニストと写真家の両親の元に生まれた。ニューヨーク市でヒップホップが流行し始めた1970年代、「M.C. Mop」の名でラッパーとしての活動をスタート。80年に発表した「アドベンチャーズ・オブ・スーパー・ライム(ラップ)」は「物語るラップ」スタイルの最初の楽曲として広く聴かれた。同曲の長さは15分以上。「母さんの子宮を出てみると、手術室にいた。医者にお尻を叩かれても、泣かずに韻を踏んでいた」といった破天荒な歌詞が人気を博した。
 スパイサーさんは2016年のインタビューで、ブルックリンの町中で同曲が流れているのを聴き「道の真ん中で立ち止まり、両手を広げて『俺が作ったんだ』と叫び、涙した」と振り返っていた。
 後年はニュージャージー州でレコード店を経営。1980年代から90年代、スパイサーさんの楽曲はウータン・クランを始めとする多くのヒップホップアーティストに影響を与えたという。