マンハッタン区チャイナタウンでホームレス4人が殺害された事件から12日で1週間。9日付ニューヨークタイムズによると殺害された1人、アンソニー・マンソンさん(49)はキリスト教の説教師だった。家族はマンソンさんがホームレスだったことを知らなかったという。
同紙が兄に聞いた話によると、マンソンさんはイリノイ州で生まれ、敬虔なキリスト教信者の母親の下に育った。およそ25年前に結婚しミシシッピ州に転居。青年牧師として活動し始め、別の親戚によると「みんな彼の説教がとても好きだった」という。
マンソンさんは同州で2つの非営利団体を設立。ホームレスや薬物依存症患者の支援に当たった。しかし安定した職に就けず、2人の子どもを養子に出し、全米の都市を転々とした。家族はマンソンさんがどこでどのように生活しているか分からなくなったという。一方でマンソンさんはSNSなどで説教活動を続け、殺害される前日にもユーチューブに説教動画を投稿していた。先月18日にインスタグラムに投稿された動画では、生活に苦しむ人を支援する団体を設立したと発表。「さまざまな支援を利用することで、強さと生きる力を取り戻せると強く信じている」と述べていた。
事件は5日未明、寝ていたホームレス5人が金属バットで殴られ、4人が死亡、1人が重傷を負った。
マンソンさんは顔が認識できないほど激しく殴打されたが、所持品から身元判明につながった。ニューヨーク州の身分証明書が今年8月に発行されており、警察はマンソンさんが州内で生活を始めて間もない可能性もあるとみている(関連記事7、8面)。