列車事故防止システム20年導入に赤信号 メトロノースとLIRRで約1087億円、MTA

 ニューヨーク州都市交通局(MTA)が、連邦鉄道管理局(FRA)から設置を義務付けられた列車事故防止システム「ポジティブ・トレイン・コントロール(PTC)」の新たな設置期限である2020年に間に合わない可能性が出てきた。ゴッサミストが22日、報じた。
 PTCは、列車が危険なカーブや線路に高速で近づいた際、地上に設置された機械と交信し、列車の速度を遅くするシステム。25人が死亡し、100人以上が重軽傷を負った08年のカリフォルニア州チャツワースの鉄道事故後、議会は全米の41の鉄道全てに対し15年までにPTCを設置することを義務付けた。しかし、赤字や人材不足、技術面などの問題から半数以上の鉄道が導入期限に間に合わず、FRA は期限を18年に、さらに20年に延長した。FRAは、メトロノース鉄道(MNR)が13年、ブロンクス区で4人が死亡する脱線事故を起こした後、MTAに18年までにPTCを導入することを命令。その後、20年12月まで延長を認めていた。
 MTAは、鉄道車両の情報通信機器を製造会社シーメンズと車両製造会社ボンバーディアーに同事業を委託。ロングアイランド鉄道(LIRR)とMNRの全車両にPTCを設置するには10億ドル(約1087億円)かかると推定されている。導入事業のコンサルタントを務めるレイル・トランスポート・エンジニアリングの代表、ナビル・ガリー氏は21日開かれたMTAの委員会で、期限内にMNR とLIRRの全車両にPTCが設置される可能性は60%から65%と語った。