連載271 山田順の「週刊:未来地図」  東京オリンピックに不安続出!  (上)   酷暑のなかでのボランティアはやはり奴隷労働

 東京オリンピックまで1年を切ったことで、最近の報道はオリンピック一色。なにもかも東京オリンピックに結びつけて報道されるようになってきた。
 ともかくオリンピックを成功させること、そして盛り上げることが、いまや国家と国民がすべて投げ打って行うことのような雰囲気になっている。
 そこで思うのは、来年の夏にたった2週間だけ行われるスポーツイベント(パラリンピックを含め4週間)が、この国と国民生活にとって、そんなに大切なことなのかということだ。
 今回はそんな意識を持って、あまり報道されていない東京五輪の問題点を、ボランティアの視線から報告する。はたして、東京オリンピックは私たち国民になにをもたらすのだろうか?

この目で確かめようとボランティアに登録

 じつは私は、東京オリンピックのボランティアに登録していて、来月行われる2回目の研修会に参加することになっている。(編集部注:このコラムの初出は10月15日)この研修会を経て、来年3月、オリンピック期間中になにをするのかが決められることになっている。
 オリンピックのボランティアは「大会ボランティア」と「都市ボランティア」の2種類があって、私が応募したのは、大会ボランティア。
 大会ボランティアは、五輪組織員会が運営し、大会運営に直接関わり、競技会場や選手村などの大会関係会場およびその周辺で活動する。観客のサポート、競技運営のサポート、メディアのサポートなどから通訳まで、14種類の役割に分かれ、募集は8万人だった。
 一方の都市ボランティアは、東京の場合、募集は東京都が行い、オリンピック期間中に国内または外国人旅行者に多言語での観光案内を行ったり東京の魅力を紹介したりする。募集は3万人だった。
 「お前は、オリンピックに批判的なのに、なぜボランティアに応募したのか」と、友人知己にさんざん言われたが、応募した理由はただ1つ。
 批判するなら、この目で確かめ、経験しなければならない。そうでなければ、外野からものを言うだけになるからだ。
 そう思い、ネットの公式ホームページを通して大会ボランティアに登録し、この4月に最初のオリエンテーションに参加した。

ボランティアを「フィールドキャスト」と呼ぶ

 4月に何回か応募者のオリエンテーションが開かれたが、私が参加したのは4月22日の午後の部。会場は、有楽町駅前の東京スポーツスクエア。受付でマイナンバーカードを提示し、あらかじめネットで受け取ったバーコードといっしょに本人認証を受けて入場した。
 入ってすぐのホールに、6人がけのテーブルがいくつも用意され、そこに順番に着席。来ていた人々を眺めると、年齢層はバラバラで、男女比はやや女性のほうが多く、中高年が目立った。私のテーブルは、なんと中高年女性が5人。聞いてみると、みなさん、東京近郊在住。派遣社員の30代後半の女性、スポーツボランティア経験ありの40代のNGO勤務女性。さらに、江東区から来たという60代前半の主婦などだった。
 全員そろうと、主催者側の挨拶があった。そのなかで、組織員会では、五輪ボランティアを「フィールドキャスト(Field Cast)」と呼ぶことにしたと発表され、「なんだ、それは」と思った。
 しかし、その後、「TOKYO 2020 Filed Cast運営事務局」という名前で、何度かメールが来たので、この言い方は定着したようだ。
 驚いたのは、その後、各テーブルで「グループアクティビィティをしていただきます」と、新聞紙を配られたこと。新聞紙を丸めてできるだけ高いタワーをつくり、高さを競うのだという。「こうして、みなさん親睦を深め、共同作業の第一歩をしてもらいます」とのこと。ここでも、なんだと思ったが、やってみると意外に楽しかった。

研修を経てから何をやるのかが決まる

 この日は、その後、2人1組で、2人の事務局担当者の面談を受けた。なぜ、ボランティアに参加したのか? 意気込みは? 何ができるか? など。まあ、雑談の類いといっていい。
 すでにネットで登録したとき、マイページにそれを書いていたので、いちおう、その旨を告げた。もちろん、ただ参加して、内情を知りたいだけなので、希望などないのだが、いちおうその旨を告げた。
 「希望どおりになるかはまったくわかりません。9月までに、ボランティアをやっていただく方には通知がいき、その後の研修を経て、何をやっていただくかが決まります」
 私のとなりで、先ほど同席した60代前半の下町主婦は「こういう機会は一生にもうないから、ぜひ、みなさんのお役に立ちたいんです。うちは商売屋ですが、ぜんぶ子どもにまかせているので時間があります」と言い、その後、「参加期間中、ボランティアを休んでオリンピックを見に行けるんですか?」と、担当者に聞いていた。
 「ボランティアとしては、オリンピックの期間中10日間は参加してもらいます。ですから、空いている日は、観戦は可能ですね。ところで、チケットは?」
 「応募中です。当たったら見に行きたいので」
 「まだ来年にならないと何をやっていただくのかはわかりません。ただ、チームを組んでやっていただくことになるので、チーム内で都合をつけて休むことは可能ですよ」
この面談後、順番に再度本人確認。マイページの記載に間違いはないか、写真のアップなどの確認をした。そうして、会場内に展示されているボランティアのユニフォームの試着をした。「ご自分にあったサイズを見つけ、それをマイページに登録してくだい」と言われた。
 何着か試着し、帽子と上下ウエアと靴のサイズを確認して帰った。帰宅後、マイページにそれを記載し、その後の連絡を待つことになった。
 そうして、先月、「TOKYO 2020 Filed Cast運営事務局」から、次の研修(共同研修)の案内が来たのである。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。近著に、「円安亡国」(2015)「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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