連載274 山田順の「週刊:未来地図」 東京オリンピックに不安続出! (完) 酷暑のなかでのボランティアはやはり奴隷労働

SNS投稿するならスポンサーに配慮を

 この10月から始まったボランティア研修会で、組織委員会側がボランティアに要求したことを、朝日新聞(10月4日付)が取り上げ、物議を醸している。
 おそらく来月、私が参加する研修会でも同じことが要求されるだろうが、要は、大会スポンサー以外の商品はSNSに投稿するなということ。ツイッター、フェイブック、インスタなどで、大会スポンサー以外の飲み物、ウエア、グッズなどを紹介、推薦してはいけないというのだ。
 朝日記事によると、担当者は、このように言ったという。
 「私たち東京2020大会は多くのパートナー企業のご支援、ご協力で成り立っている組織でもございます。各パートナー企業への配慮を、ぜひみなさん、お願いしたい」
 「(具体例としては)パートナーのコカ・コーラのアクエリアスってありますよね? あれを飲まずに、違うスポーツドリンクを飲んで、おいしいとSNSに投稿すること。それはやめてくださいね」
 つまり、ボランティアは、いちいち、なにを飲み、なにを着ているかに留意しなければならいということになる。組織委員会は、あくまでもお願いで強制ではないと言うが、これではまるで「ブラック企業」ではないだろうか。
 ボランティアは無償である。雇われているわけではない。それなのに、なぜ、ここまで規制されなければならないのだろうか。

オリンピック選手村に隠された巨大な疑惑

 現在、晴海エリアではオリンピックの選手村の建設が急ピッチで行われている。ここは、五輪後に改築され、新たに建つ50階建ての高層マンションと合わせて、およそ5600戸の分譲・賃貸住宅となり、1万2000人規模の「HARUMIFLAG」という街に生まれ変わる。
 すでに、モデルルームも公開され、一部は売りに出されている。
 しかし、この街の建設には、大きな疑惑が持ち上がっている。
 もともと、この土地は都有地であり、その不動産評価額は、1611億1800万円。ところが東京都は、この都有地をデベロッパー11社に約129億円で払い下げたのだ。なんと、評価額の10分の1以下である。
 ということは、それが販売されるのだから、まさに業者は法外な利益を得ることにならないだろうか。
 東京オリンピックは、税金をつぎ込んだ巨大な国家プロジェクトである。当初の計画案では、大会運営費用や会場整備費は3013億円だった。
 それが、いつの間にか6倍の1兆8000億円に拡大し、そのうえに東京都が負担する大会後整備費用2241億円がのって、なんと2兆円規模に膨れ上がった。
 その恩恵を受けるのはいったい誰なのか? 
 無償のボランティアを使って運営し、その下働きによって支えられるオリンピックの収益は、国民にはまったく還元されない。一般国民は、オリンピックの熱狂に浮かされるだけで、結局、得るものはなにもないに等しいのではなかろうか。
 私たちボランティアは、いったいなんのために、ボランティア活動をするのだろうか?
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。近著に、「円安亡国」(2015)「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com