グループホームの感謝祭 帰る家のない人に「手作りの味」を

 離れて暮らす家族が集まり共に食卓を囲むのが感謝祭。しかし、中には帰る家がない人たちもいる。ニューヨーク市から車で北に1時間半ほどのアルスター郡キングストン市にあるチズズ・ハート・ストリートは、そんな人たちが多く暮らすグループホーム(共同生活施設)だ。ニューヨークタイムズは11月27日、同施設での感謝祭の模様をレポートした。
 同施設の入居者は60人。ほぼ全員が精神疾患および薬物依存症、あるいはその両方を抱えている。「ここにいるのは、『愛されたい』との思いだけで生きている人たち」と話すのはマリー・チズムさん。空軍を退役後、2004年に同施設を始めた。毎週寄付される2000ポンドの食料品や食材を使って、手作りの食事を提供するのが同施設のモットーだ。
 七面鳥6羽を解凍したり、50ポンドを超えるさつまいもを調達したり、感謝祭のディナーの用意は1週間前から始まる。シェフは、ルイス・ワーナーさん(37)。アルコール依存症でホテルの厨房の仕事を失い、シェルターや路上生活を経て15カ月前、同施設にたどり着いた。シェフの経験を生かし、現在では90皿から120皿分の料理を毎日作っている。感謝祭には約100人が食卓を囲む。翌日の食卓は毎年、七面鳥ディナーの「レフトオーバー(前夜の残り)」が並ぶ。
 同施設で暮らす人たちにとってホリデーシーズンはつらい時期。それでも、「温かく心地よいものを食べているときは、会話も弾む」とワーナーさんは話した。