「タクシーキング」の凋落 捜査に協力し実刑逃れる

 ニューヨーク州オールバニ市の連邦裁判所は10月30日、税金詐欺の容疑
を認めていたエブゲニー・フライドマン被告(49)に執行猶予5年の判決を下した。同被告はニューヨーク市のタクシー営業許可証「メダリオン」で大金を稼ぎ、「タクシーキング」とも呼ばれた存在。ニューヨークタイムズは5日、同被告の「栄光と凋落」と題した記事を掲載した。
 同紙は今年5月、相次ぐタクシー運転手の自殺は、タクシー業界の幹部らが10年以上にわたりメダリオンの価格を意図的に釣り上げ、運転手に「法外」なローンを組ませて「借金地獄」に追い込んだことが原因の1つと報道。6歳のときにロシアから米国に移住、父親がタクシー運転手だった同被告は最初にメダリオンの価格高騰を仕掛けた張本人だった。2002年に20万ドルだった同価格は、14年には100万ドル(約1億854万円)に上がり、同被告は5億2500万ドル(約570億円)を稼いだという。派手な生活ぶりが新聞のゴシップ欄をにぎわした。
 ほとんどが移民というタクシー運転手が負債に苦しむ中、フライドマン被告は資産保全のためにオフショア信託口座を開設。17年、ニューヨーク州は同被告を税金詐欺と窃盗罪で起訴。しかし、トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーヘン受刑者およびタクシー業界を巡る詐欺事件の捜査への協力と引き換えに実刑を回避した。これまでに州に100万ドル、市に82万6000ドルを返済、さらに400万ドルの返済に直面している。