あれこれNY教育事情 NY公立学校のための入学・進学コンサルタント(2)

前回(www.dailysunny.com/2019/06/21/education0621)は、米国でも特殊かつ複雑な進学システムを持つ、ニューヨーク市の公立校を選ぶ際に利用したい学校コンサルタントについて解説した。
ニューヨーク市教育局(DOE)は、公立校申請プロセスを説明する各種の冊子を毎年発行、同ウェブサイトでも公開している。申請プロセスの解説は30ページ以上に及び、中学、高校と上の学校に進むにつれ選択肢が増え、それと同時にページ数も増え説明は複雑になる。これらの仕組みについて保護者が理解しやすいように解説し、疑問に答え、効果的な学校選びを支援するのが学校コンサルタントだ。DOEも積極的に学校説明会や学校選びのチャンスを広げる啓蒙活動をなど、コンサルタント的な活動を学内外で行なっている。つまり専門の学校コンサルタントによる支援活動の必要性を認めているのだ。
学校コンサルタントを上手に利用すれば、学校選びが格段と楽になる。これを利用しない手はないだろう。

公立校選びに関するDOEの活動

①プレキンダーから、小・中・高、特別支援教育、芸術関連の特別プログラムの説明会を地域ごとに、または学校へDOEの職員を派遣して開催。
②各学校が一堂に会する「スクールフェア」を開催。保護者や子どもが一度に複数校の学校の入学担当者と直接会える。校風の比較もできる。
③公立校の入学登録を担当する「ファミリー・ウェルカム・センター」での相談の受け付け。学校区(スクールディストリクト)指定のオフィスでは、窓口での相談以外に、個別相談も可能(当日、サインアップして順番を待つ)。一般にはあまり知られていないが、使い道が多いので気軽に訪れてみよう。

DOE以外の学校コンサルタントの利点

下に、ニューヨーク市の公立校選びに関与する代表的なコンサルタントおよび支援団体を挙げた。これらの団体では、セミナーやワークショップを開催する他、SNSでの情報発信、ニュースレターの発行、個別カウンセリングを行う。 セミナーの参加費は1回につき20ドルから50ドルが相場だ。コンサルテーションを個別に受ける場合は1回につき150ドルから200ドルほど。30分の電話相談などもある。
利点1 分かりやすく正確
DOEの資料は10カ国以上で発行されているが、日本語版は出ていない。英語を母国語とする保護者でも把握に苦労する複雑なシステムを、最新で正確な情報を織り交ぜながら疑問に分かりやすく答える形で構成された説明会は、学校選びの第一歩として非常に有効だ。
利点2 時間を節約できる
ニューヨーク市の公立校選びで保護者の多くが感じることは、「自分が何を分かっていないのかが分からない」ことである。「知っておけば良かったことを知らないままでいた」と後悔する保護者の声もよく聞く。公教育のデータや情報は全て公開されているが、日本とは比較にならないほどの格差と多様性に対応する情報量は膨大だ。また、学校説明会やツアーが始まり、その全てに参加しようとすると、時間がいくらあっても足りない。リサーチ段階で、学校コンサルタントから整理した情報を得ることで時間を短縮できるのはありがたい。
利点3 個別コンサルも可能
個別コンサルティングでは、子どもや家庭の状況に合わせた助言を得ることができる。ただし、公立校の進学システムにおいては、プロのコンサルタントを雇ったからといって、進学が有利に働くことはない。

代表的なコンサルタントおよび支援団体

Inside Schools
ニューヨーク市の公立教育においてDOEと並んで欠かせない教育情報、啓蒙、支援を行う組織。独自取材に基づく学校評価に定評がある。個別のコンサルティングは行なっていない。
NYC Admission Solutions
元DOE職員の、モーリス・フラムキンさんが代表を務める教育・学校コンサルタント。公立校をはじめ私立校、大学進学まで幅広く相談に応じる。提携先の学校で無料ワークショップも開催。個別コンンサルティング、模擬面接、スペシャライズド高校の試験対策も。過去の有料セミナーの動画を公開をしている(NYC Admission Solutions on Vimeo 無料・有料あり)。
NY Schools Help
ブルックリン区専門の学校コンサルタント。セミナーを定期的に開催する他、個別コンサルティングもある。情報は同区の学校のものに限られているが、一般的な教育・学校情報はブルックリン区在住者以外にも有益。
High School 411
ニューヨーク市の公立高校専門のコンサルタント。有料会員制。ニュースレター、短時間のコンサルティング、情報交換、学校ツアーの申し込みなど「時間勝負の情報」の速報などが充実しており、忙しい保護者に好評だ。個別コンンサルティングも行う。
School Search NYC
ニューヨーク市の学校コンサルタント(個別)の草分け的存在。私立学校に強いが公立校もカバーする。

日本語での進学システム勉強会

ニューヨーク市公立学校A to Z
「こども便利帳」の学校欄担当で、当コラムの筆者が開催する保護者対象の勉強会。進学システムの基本的知識を得てもらうことが目的。日本からの転入の際も役立つ。勉強会は、日本人家庭に特有な問題や疑問に答える形で進行する。日系人会アップルキッズ、ブルックリン日本語学園、おあぞら学園、NYママサロンなどで不定期開催。個別コンサルティングも行う。

学校コンサルタントは、名門校合格を得るだけに存在するのではない。ニューヨーク市の複雑極まる進学システムの下で保護者を「情報弱者」にさせないための心強いサポーターなのだ。先に紹介した団体のウェブサイトを読むだけでも有効な情報を得ることができるので、ぜひ活用してほしい。(河原その子/舞台演出家、ライター、学校コンサルタント)

ニューヨーク市公立学校コンサルタント・支援団体の代表的なもの

日本語での勉強会・相談