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2020.03.04 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

連載316 山田順の「週刊:未来地図」 新型コロナウイルス感染拡大(下)渡航注意、株価暴落、先行きが見えなくなった日本

危機感なし、会議10分の日本政府

 これまでの日本政府の対応を見ていると怒りさえ覚える。相変わらず、「やっている」感を見せているだけで、危機意識はゼロ。すべて下に丸投げで、記者会見でも会議でも、首相も厚労相もペーパーを見ながら答えているだけだ。
 しかも、対策本部とは名ばかりで、首相は冒頭の10分間ほどだけ出席しただけで、その後は関係者との豪華ランチを繰り返している。
 これを伝えた大手メディアはなく、日刊ゲンダイだけが記事にした。

《安倍政権が「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置したのは、1月30日。2月18日まで、土日を含めて計11回も開いている。安倍首相が「本部長」をつとめ、全閣僚が出席することになっている。小泉進次郎環境相が、地元の新年会に出席するために、政務官を代理出席させたのが、この「対策本部」だ。コロナ対策を話し合う最高機関の位置づけである。
 ところが、なぜか大手メディアは伝えようとしないが、会議時間は毎回10分程度。安倍首相が冒頭に挨拶したら、すぐにお開きになっているのだ。わずか10分の会議では、どう考えても効果的なコロナ対策を話し合えるはずがない。》
《たった10分の無意味な会議には、さすがに批判が噴出しはじめている。とくに、2月14日の「対策会議」には、SNS上でも<会議にたったの8分間だけ出席。その後、3時間の会食 何をやってんだ>と批判が飛びかっている。さっさと会議を終わらせ、その足で帝国ホテルに向かい、日経新聞社長らと3時間も豪華ディナーを楽しんでいるからだ。》
《安倍首相の“グルメ優先”は、この日だけではない。「対策本部」の設置以降も、コロナ対策そっちのけで、ふぐ、中華、鉄板焼き……と高級料理を楽しんでいる(別表参照)。》(2月21日付の記事)

 ただ、ここ数日は政府は本当に焦り出し、首相は「五輪は本当にできるのだろうか? もしできなくなったらどうしたらいい」と、周囲に相談しているという。

症状が出ても軽くて済むのは本当だった

こう書いてくると悲観論に満ちてくるが、安心できるのは、新型コロナウイルスの力が弱いことだ。発症して死に至るのは持病を持つ高齢者がほとんどで、致死率も低い。これは、発生以来一貫して言われてきたことで、そのため、私も当初は楽観論に立っていた。
 悲観すべきは政府の対応であり、新型コロナウイルスそのものではない。2月24日の朝日新聞記事は、この新型ウイルス自体に対する楽観論が間違いではないことを示していた。
 記事は『「軽症患者は通常治療で回復」新型コロナ、対応した医師』と題され、感染患者2人を診た京都市立病院の清水恒広・感染症内科部長にインタビューしていた。清水医師が治療した入院患者2人はいずれも20代で症状は軽く、既に退院したという。

《(清水医師は)「軽症だと、(ウイルスの遺伝物質を調べる)PCR法以外では、肺炎の病原体が新型コロナウイルスか、そうでないかを区別するのは難しい」と話す。
 肺炎は、X線検査やCT検査で肺に白い影が写ることで診断される。今回の患者の肺画像は軽症で、影がごく小さかったり、別の細菌が原因の肺炎とよく似た「すりガラス状」の影だったりしたという。
 入院中の治療は、新型コロナウイルスに直接効く薬がないため、処方したのは解熱剤ぐらい。「患者自身の回復を待つしかない。特別なことはしなくてもだんだんと良くなった」。食事も通常の入院食だった。》

 ここからは私事だが、来週、私と家内は、家内の実家のある宮崎に行くことになっていた。実家で行事があるからだ。しかし、この予定をすべてキャンセルした。
 「これだけ、全国で感染者が出ているのに、宮崎が感染者ゼロなんておかしい。感染者が出ているなら行ってもいいけど、ゼロなら、私は行かない」
 この理屈は、一理に二里もあると思った。  (了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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