未知なだけに
終息していく道筋が見えない
いまだに、新型コロナウイルスがどんなウイルスなのかわかっていない。未知の部分が多すぎる。
そんななか、早期検査を拡大させないとなると、感染拡大防止は不可能だ。つまり、感染拡大はやむを得ないとし、症状のない感染者はカウントされなければいいということだ。日本などはまさにこうしている。となると、インフルエンザ同様にウイルスの感染力が弱まる、感染者に抗体ができるに任せるということになる。
はたしてその間にワクチンや治療薬ができるだろうか? 専門家によれば、ワクチンや治療薬が実施ベースになるには、少なくとも1年はかかるという。
これまでの感染症パンデミックの歴史を見ると、史上最多の死者を出した1918年のスペイン風邪は、感染者が死ぬか、抗体を獲得し、ウイルスがとりつく新たな宿主がほとんどいなくなった時点で終息した。1957年のアジア風邪のときは、ワクチンが早期に開発され、抗生物質で合併症が抑えられようになって、ある程度の終息を迎えた。
しかし、現状ではウイルスが未知なだけに終息していく道筋が見えない。3月6日、WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、「気象条件が変わればウイルスの活動がどうなるのか、まだわかっていない」と述べ、続けて「インフルエンザのように夏になれば消滅すると考えるのは、間違いだ。現時点ではそのように考える根拠が見つかっていない」と強調。「ウイルスが自然に消えてくれると期待するのではなく、いまこそウイルスと闘わなくてはならない」と述べた。
「コロナショック」などと呼んではいけない
ということで、次は経済だが、現在の日本はすでに不況下にある。財務省が3月2日発表した2019年10~12月期の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の売上高は前年同期比6.4%減の347兆8257億円。第2四半期連続のマイナスである。9日に内閣府が発表した2019年10~12月のGDP改定値は、年率に換算した実質の伸び率でマイナス7.1%である。悪化の一途をたどっている。
後に、この不況を「コロナショック」(コロナ不況)と呼ぶだろうが、それは間違いである。というのは、コロナが日本にやってくる前に、すでに日本は不況に陥っていたからだ。アベノミクスの失敗と消費税増税で、日本経済は大幅に減速していた。そこに、新型コロナウイルスがやってきて不況が深刻化しただけだ。
日経平均は、9日、2万円を割り込み、大暴落を記録した。
すでに日本のGDPの減速は東日本大震災時を上回り、景況感の悪化はリーマンショクを上回っている。観光業から人件費カット、リストラが始まっていて、この先、これは全業種に及ぶ。感染拡大が3カ月も続けば、失業者があふれるだろう。
ただ、そうなってもこれがコロナ不況とは呼べないことは、日本株の動きで明らかだ。これまで日本株は経済のファンダメンタルズとは関係なく、公的資金(主に日銀)によって買われ、NY株と連動して上げてきた。そのメッキが新型コロナウイルスによって一気にはがれ、暴落したのである。
日銀はこれ以上の
暴落を止められるのか?
これまでの日本株の動きを時系列で見ていくと、2012年末から個人はずっと売り越している。その買い手に回っていたのが、海外投資家と日銀だ。昨年まではずっとこの流れだった。つまり、アベノミクスが成功しているように見せるために、公的資金が潤沢に投入され、それを見越して海外投資家が買っていたのである。
ところが、新型コロナウイルスで流れが変わった。海外投資家は一気に引いてしまった。この1カ月は、個人投資家の売り越しを日銀だけが買い支える構造になっている。となると、この先は日銀だけが日本株の買い手だ。はたして、これ以上の暴落を止められるだろうか?
3月2日、日銀の黒田東彦総裁は「潤沢な資金供給と金融市場の安定を確保をする」という旨の談話を出した。もっと日本株のETFを買うということだが、それがいつまでも続けられるだろうか? やり過ぎれば、日銀のバランスシートは毀損され、株安は進み、円も暴落する。先週から円高になっているが、それはFRBが金利を下げたための一時的なものにすぎない。
日本の金融緩和バブルは、ついに出口がないまま終焉を迎えることになる。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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