世界は金融緩和バブルの崩壊過程に入った
アメリカの場合も同じだ。アメリカ経済はまだ堅調とされるが、すでにNY株価は暴落を繰り返している。多少の戻しはあるかもしれないが、いくら戻しても、2万9000ドルの天井は回復しない。というより、このまま、新型コロナウイルスの感染拡大とともにずるずると下がり続けるだろう。
しかし、これもまた、「コロナショック」ではない。すでに用意されていた金融緩和バブルの崩壊の引き金を、新型コロナウイルスが引いただけだ。現在、起きている世界同時株安は、コロナショックによるのはもちろんだが、その背後には、世界の金融緩和バブル崩壊による市場の調整がある。これまでの「適温相場」は、大局的な転換点を迎えたと見るべきだ。
2008年のリーマンショックのときを思い出せば、早くから金融崩壊が警告されていた。1年前には、パリバショックというものが起きていて、世界的に債券市場は凍りついていた。それにもかかわらず、2007年の秋に、NY株価は当時の史上最高値を記録していた。
終息すれば生産も需要も一気に戻るのか?
今後、新型コロナウイルス危機が何カ月も続くと、世界経済の成長率はマイナス20%とか、とんでもない数字になるだろう。日本は確実にそうなるだろう。GDPにして、100兆円はすっ飛ぶ計算だ。こうなれば、不況ではなく恐慌だ。
株価は今後もどんどん下がっていく。そうなれば、世界中の中央銀行が金融緩和資金を出して、株と債券を買い支えていくしかない。しかし、それには限界がある。アメリカのFRBの金利引き下げ策も、何回かやれば金利はゼロになってしまう。そんななか、ジャンク債を多く抱えた金融機関が倒産する可能性もある。リーマンショックに名を残したリーマン・ブラザーズが倒産したのと同じことが起こる。
となると、アメリカ政府は最終的に税金投入のベイルアウト措置(救済政策)をとらざるを得ない。株価と債券の崩壊が止まるのは、こうした救済措置がとられた後になる。はたしてそれまでに感染拡大は止まるのだろうか?
現在、実体経済については一部に楽観的な見方もある。
それは、「現在起きているのは新型コロナウイルスの感染拡大による生産の先送り、需要の先送りである。だから、感染拡大が終息して、マインドが元に戻れば、先送りされた生産、需要が一気に高まる。そうなれば景気は、急回復するだろう」というものだ。
しかし、これは間違いだ。いま起こっているのは、生産・需要の先送りではないからだ。
ウイルスより恐ろしいアメリカ大統領
いずれにせよ、今回の新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う不況は長引く。どこまで長引くかは、まだ誰にもわからない。
ただし、ウイルス危機は戦争よりはましである。戦争は多くの若者の命を奪う。しかし、新型コロナウイルスが奪うのは、多くの場合、高齢者である。
高齢者がいなくなり、若者たちが生き残った世界を考えてみれば、そのほうが人類にとってよほど明るい未来だ。希望が戻り、世界は新しい発展のフェーズに入るだろう。
そこで最後に思うのは、アメリカの大統領選の情けなさだ。スーパーチューズデーが終わり、民主党候補はバニー・サンダーズとジョー・バイデンの2人に絞られてしまった。ということは、次の大統領は、誰がなっても、70歳以上の老人ということになる。
これは、新型コロナウイルスの蔓延より恐ろしいことだ。なぜなら、感染拡大はいくらなんでもいずれは終息する。ところが、次のアメリカ大統領の任期は2024年まであるからだ。(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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