既存薬、新薬による臨床試験が始まった
アメリカの臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」や中国の同様のサイト「Chinese Clinical Trial Registry」(CTR)などによると、現在、新型コロナウイルスの治療薬として、世界で臨床試験が行われているものは数多くある。以下、そのうち代表的なものを紹介したい。
▽抗ウイルス薬レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ、エボラ出血熱の治療薬とした開発)
▽抗HIV薬ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィの「カレトラ」、HIV感染症に対する治療薬として開発)
▽抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)
▽ぜん息治療薬シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)
▽皮膚エリテマトーデス/全身性エリテマトーデス治療薬ヒドロキシクロロキン(仏サノフィの「プラニケル」)
▽抗マラリア薬リン酸クロロキン(中国で効果ありと報告)
以上は既存薬だが、新薬の開発も進んでいる。こちらは米中の製薬会社、バイオテクノロジー会社が一歩先んじている。日本では、武田薬品工業が開発を始めている。
米中で熾烈を極めるワクチン開発競争
治療薬以上に大事なのがワクチンだ。ワクチンを中国とアメリカのどちらが先に開発するか、投資家がいまもっとも注目しているのが、この点だ。
3月17日、中国の臨床試験登録サイト(CTR)に、中国がワクチンの第一段階(P1)の臨床試験を開始したことがアップされた。それによると、臨床試験が始まったのは16日。AFPニュースによると、このプロジェクト関係者の1人は「試験の第1段階に参加したボランティアはすでにワクチン接種を受け始めている」と明かしたという。ボランティアは、全員、武漢の住民で、18〜60歳の108人という。
じつは、同じ3月17日、アメリカでもワクチンの臨床試験が始まったことが公表された、公表したのは米国立衛生研究所(NIH)で、NIHの一部門である国立アレルギー感染症研究所(NIAID)とバイオベンチャーのモデルナが協力して開発したmRNAワクチンの「mRNA-1273」というもの。
このワクチンを18〜55歳の健康な男女45人を対象に実施。4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価していくという。
新型コロナウイルスに対するワクチンの開発は、米中以外の各国の研究機関や製薬メーカーでも進んでいる。
主なところを挙げると、
▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ/NIADI▽独キュアバック▽米ノババックス▽英オックスフォード大▽香港大など。日本では、▽バイオベンチャーのアンジェスと大阪大▽田辺三菱製薬などが進めている。
いずれにしても、まだ始まったばかりで、実用段階に入るのは、早くて1年後とされる。はたして、治療薬とワクチンの開発にどこが最初に成功するか。それによって、米中覇権戦争の行方も、コロナ以後の世界情勢も、かなり大きく左右されることになる。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com