連載331 山田順の「週刊:未来地図」ゴールデンウィーク明けまでに、日本は「コロナ禍」で「焼け野原」になる! (上)

 入院・手術のために2回休ませてもらったが、今回から再開する。入院中ずっと思ってきたのは、日本はこのままで大丈夫なのかということであった。
 新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染拡大に対して、すべてが後手に回り、様子見の場当たり対策ばかりが行われ、いまなおそれを続けています。もはや、「なんでなんだ」と追及する気力も失せた。
 このままでは、「緊急事態宣言」の期限とされる5月6日(GW明け)までに、日本は「コロナ禍」で「焼け野原」になっているかもしれない。

手術後4日間、集中治療室(ICU)で過ごす
 まず、自身のことから記すと、3月27日に、センター南(横浜市営地下鉄の駅)にある「昭和大学横浜市北部病院」に入院、3月30日に南淵明宏医師のオペを受けた。手術前日の日曜日、なんと雪が降った。
 都心では積雪1センチを記録し、3月下旬の積雪は32年ぶりだとニュースが伝えていた。病院8階のデイルームから、降りしきる雪を見ていると、本当に不思議な気分になった。娘はNYに取り残され、ロックダウンのなかほぼ監禁状態で暮らしている。私は入院。家内は、コロナのため、身内とはいえ、手術日以外の面会は禁じられている。 桜が満開だというのに、こんな春がいままであっただろか?

 手術が終わって気がついたのは、当日の夜7時ごろ。
 以後、4日間、集中治療室(ICU)で寝たまま過ごした。多くのチュープ、点滴、酸素吸入器などに繋がれて生かされていると、いまの医学のすごさを思わずにいられなかった。左右両方の脚が約30センチ切られ、そこから静脈が取り出されて冠動脈に移植された。南渕氏は、この分野の日本の第一人者である。
 手術後、家内は、心筋梗塞の跡があったと南渕氏から聞かされたという。自覚症状はなかったが、すでに心筋梗塞を起こしていて、そのときは他の血管により虚血が回避されていたようだ。

言葉に力がない首相の「緊急事態宣言」
 一般病棟に戻って、リハビリを続けるなか、4月7日夜、安倍晋三首相の「緊急事態宣言」をテレビで見た。連日の「コロナ禍」の報道のなか、彼がなにを言うのかに注目したが、本当にがっかりした。
 いつもながら、彼の言葉には力がない。プロンプターに映る原稿を、間違えないように読み上げているだけだ。内閣府のスタッフとスピーチライターがつくった内容に沿い、いかにも自分の言葉のようにしてスピーチする。この緊急時なのに、なぜこれなのか?
 その結果、彼のスピーチには、短いフレーズが一つもない。心に響く言葉がない。ともかく、原稿がすべて長すぎる。有名なルーズベルトの言葉「恐れるべきは恐れそれ自体である」を、ルーズベルトの言葉だと言わずに使ったのには、本当に呆れた。
 この夜、なによりも心を洗われたのは、病室の窓から見た夜空に輝くスーパームーンだけだった。
 退院は、4月11日の土曜日。すでに桜は散り始めていた。病院からタクシーに乗り、横浜の中心街を通って自宅に向かったが、そこに人通りはほとんどなかった。
 手術のため胸骨が切られたので、その痛みが今後も続く。脚と胸の手術跡の傷もまだ痛い。コロナ禍がなくとも、今後少なくとも1カ月は身動きできない。

「自粛」「要請」だけで、あとは精神論
 それにしても、日本はどうしてしまったのだろうか? 新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染が始まって以来、日本の悪いところばかりがオモテに出てしまった。
 今日までのことを思うと、政府がやってきたことは、将棋にたとえれば「悪手」ばかりだ。しかも、時間を無駄に使ってきた。これでは、じきに詰んでしまう。
 それにしても「検査数の増大は医療崩壊を招く」「日本は独自にうまくやっている」と言ってきた政権擁護論者たちは、いま、どう答えるのだろうか。
 また、「検査数の増大は意味がない」「いまは持ちこたえている」と言ってきた専門家会議と政府は、この事態をどう言い繕うのだろうか。ここまでの経緯をみれば、日本の現状は、対策を先送りしてきた「人災」だと断言できる。
 見苦しかったのは、緊急事態宣言後の東京都(小池百合子・都知事)と政府(西村康稔・経済再生担当相)の休業要請施設の範囲をめぐる攻防だ。日本は法規上、「ロックダウン」(lockdown:都市封鎖)を命じられないとはいえ、こんなことを宣言後に話し合うというのは本末転倒ではなかろうか。
 ともかく、すべてが「自粛」と「要請」だから、緊急事態宣言をしても「見せかけ」だけだ。そんなことは初めからわかっていただろう。
 ほとんどの識者、メディアが「日本人は必ず一致団結できる」「日本人はものごとをきちんと守る」と言うが、本当なのか? 私は、日本人だけが、世界の民族のなかでとくに優れているとは思わない。
 こんな根拠なき精神論に頼っていると、あの戦争と同じように最終的に滅亡してしまうだろう。
「法的根拠がないとできない」と言うなら、議会で法をつくればいいだけだ。与野党とも議員たちはなにをやっているのだろうか? 議員とは「lawmaker:ローメーカー:法をつくる人」である。立案・審議・可決すれば、欧米諸国に匹敵する「緊急事態宣言」(state of emergency)の特別法など即座に施行できるはずだ。(つづく)

この続きは4月20日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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