連載332 山田順の「週刊:未来地図」ゴールデンウィーク明けまでに、日本は「コロナ禍」で「焼け野原」になる! (中)

“口先”だけの「世界的にも最大級」の経済対策
 今回の緊急事態宣言では、史上最大規模で「世界的にも最大級」(安倍首相)、事業規模108兆円という経済対策も発表された。それを口にする首相は「どうだ」という顔をしていたが、いざ、中身を見ると、またしても“口先”対策にすぎなかった。
 108兆円という金額は対GDP比では2割に達するが、そのなかには税金や社保険料の支払い猶予分26兆円、2019年12月に閣議決定された経済対策でまだ執行されていない分の金額も含まれていたからだ。
 要するに「真水」部分は半分にも達していなかったのである。
 多くの国民が望んだのは、「休業補償」だった。しかし、政府は、先に発表した「一世帯30万円給付」(年収制限あり)と、「フリーランス1日4100円の休業補償」だけでいいとして、英米のような本格的な休業補償は打ち出さなかった。その代わり、中小企業・個人事業主などへの200万円、100万円の支給を打ち出したが、こんな額ではとても補償とは言えない。たとえ、この額を即座にもらったとしても、中小の小売り、飲食店などは、「休業=倒産」となってしまう。
 英国ではロックダウンで休業を余儀なくされた店の従業員に対し、政府は賃金の8割を補償した。そのため、小売店、飲食店などは即座に店を閉めた。
 アメリカでは、総額2.2兆ドルの対策を決め、「大人1人1200ドル(約13万円)、子ども1人500ドル(約5万5000円)」が支給されることになった。
 日本のように、細かい縛りはほとんどない。つまり、「封鎖」と「補償」はセットにすべきで、さらに「法的拘束」(いわゆる罰金、逮捕など)も課さなければ、人々の行動は縛れない。

経済対策で露呈した「国民見殺し」
 緊急事態宣言が出されて以来、メディアは、政府の要請内容を繰り返し報道している。また、今日までメディアは、「人との接触を8割減らす」ということを、繰り返し呼びかけている。
 この8割というのは、専門家委員会が提示したもので、そうすると2週間後に感染者数は一気に減るという。しかし、基礎となるデータが公表されていないので、正確性は不明だ。
 いくらリモートワークといっても、緊急事態宣言後も会社は就業を続け、サラリーマンはほとんどが通勤している。これでは「8割減」などできるはずがない。
 そこで、今週になって首相は、緊急事態宣言の対象7都府県の全事業者に対して、「オフィスへの出勤者を最低7割削減してほしい」という要請を出した。
 11日になって、「緊急事態を1カ月で終えるためにはもう一段の国民の協力が不可欠だ」と述べた。
 しかし、これを現時点で守ると、小売、飲食店ばかりか、中小事業社はほとんどが潰れてしまうだろう。日本のものづくりを底辺から支える中小企業は、たちまち行き詰まってしまう。
 なんの補償も示さず、「閉めろ」と自粛・要請をする政府。それは、弱い人々に「このまま死んでくれ」と言っているのと同じだ。「国民見殺し政策」である。
 これが、なにか政策的な目標(たとえば、集団感染によって国民の多くが抗体を持ち、それによって新型コロナウイルスの感染が収束する)の下に行われているならまだなんとか許せるが、そうでないのだから、この政権の無能ぶりには呆れるほかない。
 いや、もはや「呆れる」を通り越して、「哀しい」と言うほかない。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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