連載338 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。 これまでの情報を整理する(第一部・下)

(7)専門家会議は御用学者ばかりで見識なし
 安倍内閣がことあるごとに持ち出してきた専門家会議も、ひどいものだ。私はハナから、彼らの見識、発表データを疑ってきた。
 今回の「接触8割減」は、専門家会議のメンバーの1人、北海道大学教授の西浦博氏が作成したグラフに基づいている。しかし、このグラフが正しい、あるいは未来を確実に予測しているかどうかという根拠はない。そこで、15日になって彼は「対策がなければ42万人が死ぬ」などと言い出したが、いまさら大げさに警鐘しても遅すぎる。
 彼は、単なる真面目な「理論疫学」の専門家にすぎない。
 西浦教授同様に、専門家会議のメンバーは学者が多く、それも御用学者がほとんどで、見識というものがない。とくにひどいのが副座長の医学者・尾身滋氏(元厚労省)で、この人が「オーバーシュート」だとか「クラスター」だとか、英米メディアもほとんど使わない学者英語を使って、「日本は持ちこたえている」などと言ってきた。
 専門家会議は、2月24日に「これから1〜2週間が瀬戸際」という見解を出した。そこで、首相は25日に突如、「一斉休校」を要請した。
 しかし、専門家会議は、PCR検査数の増加は必要ないとし続け、今日まで危機感に基づく提言はなにもしてこなかった。2月24日から3週間後、3月19日に行われた会議では、前回からの検証もなく、見解はまたも曖昧なまま。そのため、その後の連休は「自粛疲れ」で、人々はどっと外に出てしまった。
 じつは、専門家会議(正式名「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」)というのは、国立感染症研究所(感染研)、東京大医科学研究所(医科研)、国立国際医療研究センター(医療センター)、東京慈恵会医科大学(慈恵医大)の4者が中心となった御用会議で、厚労省の行政に組み込まれている。
 彼らの体質は、「臨床の軽視」による「研究至上主義」である。また、官僚組織と同じで、情報を隠蔽してしまう傾向が強い。はっきり言って、今日までどんな会議が行われたのか、その議事録は公開されていない。これは、政府のコロナ対策会議もいっしょだ。
 こうした専門家会議、対策会議から発せられた情報を垂れ流してきたのが大手メディアである。ここまで感染拡大を招いた一因は、大手メディアにもあると言えるだろう。

(8)日本の「コロナ禍」は今後どうなるのか?
 というわけで、今後、日本の「コロナ禍」がどうなるかだが、これは、前回記事で述べたように、「先進国一人負け」になる。このままダラダラと長引き、収束が見えないまま推移すると考えられる。最悪の場合、GW明けに日本は「焼け野原」になっている。
 中国も韓国もすでにピークアウトし、感染拡大の波は収まった。アメリカもじきにピークアウトしそうである。欧州は、一部の国、オーストリア、チェコなどで、段階的にロックダウンが解除され出した。やがて、イタリア、フランスなども続くだろう。
 ところが、日本はその逆だ。この3日間、東京の確認感染者数は、11日の197人をピークに、12日に166人、13日に91人、14日に161人、15日に127人、16日に143人とじょじょに減ってきている。しかし、これは検査数による見せかけにすぎない。
 日本政府はいま、太平洋戦争、福島原発事故などと同様の「失敗」を繰り返している。考えてみれば、アベノミクスも大失敗で、目標のインフレ2%などついに達成できなかったことを思えば、もはや、未来は絶望的だ。
 第二次大戦の失敗を研究した名著『失敗の本質』(1991年中央公論新社)があるというのに、なぜ、日本は同じことを繰り返すのだろうか。過去にも他国にも学ばない、そういう日本人とは言えない日本人が、いまやこの国の中枢を占めている。(了、第二部に続く)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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