新型コロナウイルスの影響による裁判所の閉鎖と、拘留施設内での感染への懸念から、犯罪者を逮捕しても起訴しない事例がニューヨーク市で増加している。ウォール・ストリート・ジャーナルが28日、報じた。
ニューヨーク市警察(NYPD)によると、デブラシオ市長が3月12日に緊急事態を宣言して以来、市では逮捕されても起訴されていない事件が500件あったという。特にブルックリン区での起訴件数の減少は顕著で、暴力行為をのぞく軽罪事件の391件が起訴されず、65件の重罪事件が起訴猶予となっていた。同区の地区検事局によると、拘留施設内でウイルス感染の予防対策として、施設内の人を減らすため、3月からは軽罪での起訴を減らして、約50件の重罪事件の起訴も延期しているという。
NYPDは、起訴件数の減少や、感染拡大の防止策として刑務所内から釈放された犯罪者の再犯を懸念。ブルックリン区検事局によると、同区では商業施設を狙った強盗罪で逮捕され、起訴猶予となり釈放された犯罪者が、同じ罪で再度逮捕されるという事件が複数起きていた。
NYPDの犯罪管理戦略班の責任者、マイケル・リペトリーさんは、「強盗罪のような重罪の再犯者が、処罰なしに釈放されることは容認できない。市民を危険にさらす」と訴えている。
一方、ブロンクス、クイーンズ区、スタテン島の検事局は、コロナ禍の影響による起訴方針の変更はないと主張している。NYPDによると、市では、緊急事態宣言後の最初の2週間、閉鎖された飲食店や小売店を中心とする商業施設で発生した強盗事件は75%増加したという。