連載341 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。 これまでの情報を整理する(第二部・下)

(13)猫やトラにも感染!ペットは大丈夫か?
 洪水のようなコロナ禍報道が続くなか、驚いたのが、ニューヨークのブロンクス動物園で、マレートラが新型コロナウイルスに感染していることが判明したというニュースだ。このトラは3月末から空咳などの症状を示しており、動物園では、無症状だった飼育員から移ったと推定しているという。
 そこで思い出したのが、中国でネコにも感染するという研究結果が発表されたことだ。この研究によると、実験チームはネコ同士の感染も確認したが、イヌには感染しなかったという。ただし、この実験は高濃度のウイルスをネコの鼻に噴射しているので、現実的ではないと専門家は批判した。
 それにしても、トラとネコ。つまり、ネコ科の動物は新型コロナウイルスに感染するということだから、ネコをペットして飼われている方は気をつけたほうがいいだろう。
 新型コロナウイルスは、もともと武漢の海鮮市場か武漢ウイルス研究所の動物(コウモリ)が由来とされている。つまり、元は動物が宿主だったのだから、ネコが感染するのは不思議ではない。
 専門家に聞くと、今回の新型を含むコロナウイルスというのは、もともとは動物のものであるという。これまでの研究によると、コロナウイルスは、イヌ、ニワトリ、家畜のウシ、ブタ、ネコ、センザンコウ、コウモリなどの哺乳類や鳥類に感染することがわかっているという。
 したがって、インフルエンザウイルスと同じような対応を取ったり、同じアプローチで研究を続けるより、まずは動物の世界でどのような感染症だったのかを調査・研究して対応し、クスリやワクチンを開発すべきだという。

(14)あと3年続くのか?「スペイン風邪」の教訓
 ビル・ゲイツは新型コロナウイルス を「100年に1度発生するレベルの病原菌」と称した。となると、100年前に大流行した「スペイン風邪」を念頭に、今回のコロナ禍がどうなるかを考えなければならない。
 スペイン風邪の流行は、1918年から20年まで、なんと3年間も続いた。全世界で2億人が感染し、死亡者は2000万〜4000万人に達したと言われている。
 日本でも大流行して多くの死者が出たが、その状況を、当時の日本政府が発行した「流行性感冒」と「日本帝国人口動態統計」をベースに東京都健康安全研究センターが調査を行い、「日本におけるスペインかぜの精密分析」としてまとめている。
 それによると、3年間の総患者数は2380万4673人、死亡者数は38万8727人。当時の日本の人口は約5500万人だったから、なんと半数が感染したことになる。
 小康状態を挟み、流行のピークは3回あった。1回目は1918年8月から19年7月までで、患者数は2116万8398人、死亡者数は25万7363人、致死率は1.22%。2回は1919年9月から1920年7月までで、患者数は241万2097人、死亡者数は12万人7666人、致死率は5.29%。3回目は1920年8月から1921年7月までで、患者数は22万4178人、死亡者数は3698人、致死率は1.65%である。
 このように見ると、今回のコロナ禍も、流行は繰り返し、第1波が去っても、第2波、第3波が来ることを予期しておかねばならない。また、致死率もスペイン風邪と近いので、当時と同じレベルに医療が落ちれば、数十万人が死ぬと考えなければならない。
 折から4月15日、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームは、「重症者への対応能力が大幅に強化されたりワクチンが使用できるようにならなければ、人と一定距離を置く措置(ソーシャルディスタンシング)は2022年まで必要になる可能性がある」と指摘した。
(了、第三部につづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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