連載344 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。 これまでの情報を整理する(第三部・中)

(19)社会を底辺から支えるギグエコノミーの崩壊
 アメリカの話を続けると、最近のアメリカ経済は「ギグエコノミー」(gigeconomy)で回っている。ギグ(gig)とは、日本で言う「ライブ」のことで、ライブハウスなどでギタリストなどがライブセッションをすることを指す。そこから転じて、インターネットなどを通じて単発の仕事でおカネを稼ぐのがギグ労働で、そうした仕事でお金が回っている経済がギグエコノミーである。
 現在、アメリカの労働者の36%がギグエコノミーで働いているとされ、その職種は、レストランのウエイター、仕出屋、ウーバーの運転手、ホテルやビルの掃除人、イベントのスタッフ、企業のアウトソース事務、プログラマーなど多岐にわたっている。
 これらのギグ労働者をコロナ禍は直撃した。アメリカでは約1550万人が、飲食店で働いており、そのうちの約300万人が貧困ラインにいる。彼らは仕事がなくなって、家賃が払えず、ホームレスになる者も出ている。
 トランプが決めた現金給付は4月10日から始まったが、口座に振り込まれるのは、1200ドル(年収7万5000ドル以下の労働者)。これでは足りないという声も多いが、「これでなんとか助かった」という声もSNSに数多く発信された。
 このようなギグエコノミーは、日本でも進んでいて、日本の場合は、政府の現金給付はまだまだ先になるから、アメリカ以上に困窮者があふれるだろう。
 4月8日、英BBCの報道番組「ニューズナイト」の司会者エミリー・メイトリスは、新型コロナウイルスは「金持ちも貧乏人も誰でも平等に扱う」などという言い分や、「不屈の胆力があれば克服できる」という政府関係者の発言に、「そんなことはない」と反論した。
 これまでの状況を見れば、英米とも、低所得層ほど感染するリスクが高く、感染者数も多いからだ。これは、日本もまったく同じである。「心を一つにすれば必ず克服できる。頑張りましょう」と唱えているメディアやコメンテーターの気がしれない。

(20)コロナで世界政府による支配が始まる
 コロナ禍で世界は危機に陥ったが、危機になるときまって囁かれるのが「陰謀論」である。今回のコロナ禍の陰謀論は、毎度おなじみの世界のパワーエリートたちが、人類の数を減らして家畜化し、それを支配するというものだ。そのために、人為的につくられた新型コロナウイルスがバラ撒かれたというのだ。
 陰謀論の世界で有名な「NWO計画」というものがある。これは、「新世界秩序」(New World Order:NWO)のことで、パワーエリートたちは世界政府を樹立してNWOをつくろうとしているという。NWOは、徹底した管理社会で、人類は思想や行動を完全に統制・統御される。
 つまり、いまのロックダウンは、その実験のようなものだ。
 陰謀論者はあらゆることを、陰謀論に結びつける。たとえば、3月末、英国のブラウン元首相が世界の主要国の指導者に対し、一時的に世界政府を設立するよう呼び掛けたと英「ガーディアン」紙が伝えた。新型コロナ感染拡大を受け、医療・経済両面での危機に対応するための呼びかけだったが、これもNWOのステップだと言う。
 また、ロックフェラー財団が10年前に作成したという「パンデミックの計画書」も持ち出されている。さらに、殺害されたリビアの独裁者カダフィ大佐が、かつて国連で「インフルエンザはアメリカの生物兵器」と述べたことを指摘して、世界を動かす影の集団がいることを示唆する。
 トランプの熱狂的支持者によると、トランプは影の集団につながるアメリカの「ディープステイト」(deep state:闇の政府)と戦っているのだという。
 陰謀論の是非はともかく、コロナ禍後の世界が、デジタル技術を駆使した管理社会になる可能性がある。中国型の強権国家がさらに強化され、世界経済が統制経済に入ってしまう可能性がある。となると、自由と人権、私有財産は失われてしまう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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