連載351 山田順の「週刊:未来地図」「集団免疫」はコロナに打ち勝つ最終手段なのか?(上)

 世界各国は、やっとロックダウンを解除する方向に政策の舵を切った。ただ、日本だけは緊急事態宣言を延長し、先行きが見えない。(編集部注:このコラムの初出は5月5日)
 そんななか、注目されているのが「集団免疫」だ。集団免疫ができれば、感染拡大は収束するとされる。しかし、本当にそんなことが可能なのだろうか? また、集団免疫ができたなら、以後は元どおりに暮らしていいのだろうか? 社会も経済も元に戻るのか?

中国が封鎖を解除して経済を全面再開

 2020年5月のこの時点で、コロナ禍から脱して経済活動を全面的に再開しているのは、主要国では中国だけである。
 習近平政権は3月半ば以降、「新型コロナウイルス」(Covit-19)を抑え込んだ自国の体制の優秀さを国民向けに強調し、「中国は必ず双勝利ができる」と言ってきた。「双勝利」とは二つの勝利のことで、一つがウイルスの撲滅で、もう一つが経済復興である。
 4月30日、首都北京では、警戒レベルが引き下げられ、ほかの地域から北京を訪れる際の隔離措置が緩和された。そして、迎えた5月1日からの連休で、中国各地は人で溢れた。この間、11億人以上が旅行を楽しみ、都市と観光地は賑わい取り戻した。日本のゴールデンウイークとは大違いである。
 日本は、緊急事態宣言をさらに1カ月延長し、自粛ロックダウン”が続くこととなっていた。(編集部注:このコラムの初出は5月5日)

欧米でもロックダウンの解除が始まった

 長らくロックダウンを続けてきた欧米も、段階的に封鎖を解除し、経済再開に向けて政策を転換していくことになった。
 アメリカでは早々とジョージア州がロックダウンを解除し、4月30日からテキサス州など9の州が続いた。今後、この流れは続いていくが、最後まで残るのはやはりニューヨーク州だろう。私の娘は1カ月以上、マンハッタンのアパートに閉じ込められていたが、便が取れたので今週いったん日本に帰国することになった。ただ、帰国しても14日間は、自己隔離しなければならない。
 欧州では、イタリア、スペインがロックダウンの段階的解除に入った。バルセロナ在住の知人は、「やっと散歩に出られた」と、動画を送ってきた。
 スペインは今後、4段階で完全な解除を目指すという。
 ドイツは、公園や動物園、美術館や教会の再開を認めるが、移動制限は維持するという。ただ、状況が好転しているので、間もなくロックダウンは解除されるという。
 英国は、ジョンソン首相が30日、「新型コロナウイルスの感染拡大はピークを越えた」と宣言した。ただ、ロックダウンの解除については慎重で、じきに解除に向けての「包括的な計画」が発表されるという。

「PCR検査」と「抗体検査」の違い

 このような中国と欧米の状況を見ていると、日本だけが取り残されているような気がしてならない。だらだらと、効果がわからない対策を、小出しに続けていて、本当にいいのかと不安が募る。
 そんななか、注目したいのが、「抗体検査」(antibody test)だ。
「PCR検査」(polymerase chain reaction test)では、綿棒で鼻腔から検体を採取して、新型コロナウイルスの感染の有無を調べる。つまり、現在、ウイルスを持っているかどうかを判定する。持って入れば「陽性」(positive)で、持っていなければ「陰性」(negative)だ。
 これに対して、抗体検査は、過去にウイルスに感染したかどうかを、血液を採取して調べる。感染していれば「抗体」(antibody)ができているのでそれが検出される。つまり、こちらは、過去に新型コロナウイルスに感染していたかどうかがわかる。PCR検査が時間がかかるのに比べ、抗体検査は圧倒的に早い。簡易キットなので15分ほどで結果がわかるという。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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