連載354 山田順の「週刊:未来地図」 世界エアライン危機:自由に旅行できる日は再び訪れるのか?(上)

 現在、世界中のエアラインがほぼ止まっている。コロナ禍が起こる前まで、世界どこにでも自由に行けたのに、いまやどこにも行けなくなった。入国できても検疫が行われ、2週間は自己隔離させられてしまう。
 いったい、この状況はいつまで続くのだろうか? 今後、エアライン業界はどうなるのだろうか?  私たちは再び飛行機に乗り、世界を自由に旅行することができるのだろうか?

帰国後検査を受け、ホテルで結果待ち待機に

 先日、JALでロンドンから帰国した知人は、羽田空港到着後すぐにPCR検査を受けさせられ、結果が出るまでホテルでの待機を命じられた。2日後、結果が陰性だったので、自宅に戻ったが、それでも2週間は家から出られない。
 これは、いまやどの国から帰国しても同じだ。また、私たちは、どの国に行こうと、現地で同じような検疫を受けなければならない。
 現在、JALの国際線の減便率は、世界全地域で90%を超えている。ハワイ、グアム、オーストラリアには1便も飛んでいないし、ロサンゼルスやニューヨークなどの北米は週1便程度。中国、東南アジア各国も週1〜2便。欧州便はかろうじてロンドン便が週4便あるだけだ。
 知人はこのロンドンからの便で帰ってきたわけだが、それはどうしても外せない家族の用事のためで、それがなければわざわざ帰国しなかった。乗客は少なく、客席はビジネスもエコノミーも4割程度しか埋まっていなかったという。もちろんだが、いわゆる旅行客はゼロだ。
 こんな状況がいったいいつまで続くのか?そして、今後、私たちは再び飛行機に乗って、他国に出かけることができるのだろうか?
 先日、私の娘もニューヨークから帰国し、検査を受けた。結果は陰性だったが、いま、ホテルで隔離生活を送っている。「JFKも成田もガラガラ。こんなの、いままで見たことがない」と驚いていた。そして、「今度いつNYに行けるだろうか?」と、心配している。

1年で2兆円の損出ではとても済まない

 現在、全世界で、国際便はほとんどストップしている。国内便も減便され、飛んでも乗降率は20〜30%という有様だ。そのため、世界の航空会社はどこも大幅な赤字を出し、存続が危うい状況になっている。
 日本の2大キャリア、JALとANAも、前例のない危機に陥っている。
 3月下旬、定期航空協会の平子裕志会長(ANA社長)は、首相官邸のヒアリングにこう回答した。
「この状態が1年続いた場合、業界全体の減収額は2兆円に達する恐れがある。2〜5月の減収額は約5000億円とみられ、SARSやリーマンショックで被った減収額を上回る」
 平子会長が「この状態」と言ったのは、1〜3月期の実績予測を踏まえてのこと。まだ、この時点では4月の緊急事態宣言は予想されず、それが1カ月以上も続くとは考えてもいなかった。となると、4月、5月の急激な落ち込みを加味すれば、1年で2兆円の損出ではとても済まないだろう。
 JALの場合は、2010年に破綻し、会社更生法の適用を申請したことが頭をよぎる。その後、JALはなんとか再建されたが、追い風になったのは、インバウンドだ。中国などからの外国人観光客の旺盛な需要があった。しかし、コロナが収束しても、当分の間インバウンドは戻らないだろう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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