連載362 山田順の「週刊:未来地図」告発!日本を焼け野原にした“コロナ戦犯”たち(下2-1)

責任逃れ発言、現場感覚ゼロの厚労省2トップ

 官邸権力のパシリで、無能の典型、A級戦犯に数えるべきなのが、加藤勝信厚労相(64)である。これほど、なにも考えず、官僚の上に乗っかり、官邸を忖度して振る舞ってきた人物も珍しい。
 彼がなにより国民の反感を呼んだのは、厚労省が決めたPCR検査のガイドライン「37.5度以上の発熱が4日」について、「目安ということが、相談とか、あるいは受診の一つの基準のように捉えられた。われわれから見れば“誤解”でありますけれど…」と述べたことだ。
 これは、完全な責任逃れ発言だから、「誤解だって、なにが?」「 許せない!」「ふざけるな!」「嘘をつくな」「ひどすぎる」という声が、SNSであふれた。
 加藤厚労相も、東大、大蔵省(現財務省)のエリートコースを進んだ元官僚である。元農産相加藤六月の秘書から娘婿入りして政治家となったので、霞ヶ関と永田町しか知らない。しかも、大蔵省上がりだから、厚労行政などまったくわからない。
 そのため、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」への対応では失態続きとなり、職員に感染者を出したうえ、記者会見でまさかの発言をした。2月22日の会見で、記者が、全国で市中感染が広がっていることを指摘すると、加藤厚労相は、「市中感染という概念がちょっと分からないんですけど……」と言ってしまったのだ。
 こんな大臣だから、コロナ対策は厚労省の次官級ポストである医務技監の鈴木康裕氏(60)が仕切った。この鈴木氏が、PCR検査を増やして軽症者の入院が増え続けたら重症患者に手が回らず、医療崩壊を起こすと懸念し、検査数を絞り込んだガイドラインをまとめた張本人である。
 医系技官は医師免許を持つが、臨床経験はほぼない。医者というより官僚だ。鈴木氏は慶応医学部の出身で、厚労省一筋、まさに厚労省の“ドン”と言っていい。
 新型コロナ対策では、専門家会議の人選などを取り仕切り、会議には毎回、出席した。さらに、首相へのブリーフィングを繰り返し、対応を徹底して間違えさせた。アビガンの承認にも大反対してきたという。
 つまり、加藤厚労相と鈴木医務技監という厚労相ツートップが、コロナ禍を“人災”にしたと言っていいだろう。

危機感ゼロだった厚労省のトンデモ人間たち

 厚労省には、まだまだ戦犯がいる。
 その1人が、「ダイヤモンドプリンセス」の船内でマスクをしなかった姿が目撃され、医師の1人から告発された大坪寛子審議官(53)だ。和泉洋人首相補佐官(66)と“コネクティングルーム宿泊”(公費を使った不倫主張疑惑)が問題視された女性官僚である。
 彼女は、船内でたびたびマスクをしていないで歩いていたという。しかも、作業場であるサボイ・ダイニングの作業エリアにスイーツやコーヒーを持ち込んで飲食していた。サボイ・ダイニングは、感染対策のために左右に分けられており、右側は食事可能エリア。左側は作業エリアとなっていた。ところが、大坪審議官は、作業エリアのほうで飲食をしていたというのだ。
 大坪審議官のほかにも、メディアで問題視された厚労省官僚はいる。たとえば、金井要東海北陸厚生局長は、「ダイヤモンドプリンセス」の感染者を受け入れた愛知県岡崎市の住民説明会で、「ゴジラのような大きなせきをする人がいない限り感染しない」などと発言し、加藤厚労相が陳謝する事態に追い込まれた。
 橋本岳副大臣(46)も、問題行動を批判された。
 彼は橋本龍太郎元首相の次男で、自民党のエリート2世議員だが、自らツイッターに投稿した写真で墓穴を掘ってしまった。橋本氏は政府対応の指揮を執っていた責任者なのに、感染症に対する認識が甘すぎたと言える。
 橋本氏は、船に乗り込んだ神戸大教授の岩田健太郎氏(49)に、「船内のゾーニング(感染のリスクがある場所と安全な場所の区分け)に不備がある」と告発されると、「そんなことはない」と反論するために船内で撮った写真を投稿した。そして、写真に「左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」という説明文を付けた。
 ところが、写真を見る限り、清潔ルートと不潔ルートはロープで区切られているだけで、ルートの手前は、清潔・不潔双方が交わっていたのだ。要するに2つのゾーンはクロスしており、岩田教授が「この写真こそがゾーニングの不備の証拠」と再指摘すると、橋本氏はさかさず写真を削除したのである。これが SNSで話題にならないわけがない。一時、ツイッター上で「不潔ルート」がトレンドに入った。
(下2-2につづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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