連載371 山田順の「週刊:未来地図」香港崩壊、新興国通貨の暴落、コロナ大不況・・・米ドルへのシフトを急げ!(完)

経済対策の先にある国家の財政破綻

 まだ第二四半期4-6月期の経済指標が出るには時間がある。しかし、どんなに高く見積もっても、経済成長率(年率換算)はマイナス20%を超えるだろう。しかも、第三四半期も第四四半期も明るい材料はゼロだ。
 これで、株価が上がり、円高になるとは、普通の経済アタマでは理解不能である。
 現在、日本は、首相が“世界でも最大級”と豪語する救済予算(「経済対策」と称している)を組み、国債を日銀に引き受けさせるという「財政ファイナンス」でおカネを捻出している。つまり、「金融緩和」という名の下に、おカネを擦り続けている。
 現在、第二次補正予算まで来たが、この後、第三次、そして来年度予算が待っている。もはや、こうなると、おカネをさらに擦り続ける以外に道はない。
 しかし、永遠におカネをすり続けることはできない。続ければ、どこかで、おカネに対する信任が崩れ、通貨「円」は大きく下落する。これまでは、なにかあるかと「円は安全資産」と言われてきたが、それが単なる神話だったことが明らかになる。
 そうして、市場に大量に供給されたおカネがインフレを引き起こす。このインフレはコントロールが利かないハイパーインフレになる可能性がある。そんななか、金利が上昇していくと、国債の利払い費がかさみ、国家の財政破綻が視野に入ってくる。

韓国映画『国家が破産する日』の教訓

 ここで再び、アジア通貨危機に話を戻すと、あのとき、韓国は財政破綻(デフォルト)した。話を簡単にするために、当時のことを、事実を元にして描いた韓国映画『国家が破産する日』(英題は『DEFAULT』)で説明してみたい。
 この映画のポイントは、韓国のように通貨安で財政が破綻したとき誰が勝者になるか?が、教訓としてわかることだ。
  危機に陥った韓国を「救う」ために乗り込んできたのは、IMFとアメリカの金融機関だった。IMFと彼らは裏でつながっており、善意で韓国を救おうなどとは思っていなかった。これはさしずめ、いまのWHOと裏で手を組んだ中国を思わせる。WHOは世界を救おうなどとは思っていないだろう。
 この映画の主人公は、国のためにIMFの援助の受け入れに反対する韓国銀行の通貨政策チームの女性チーム長ハン・シヒョンと、高麗総合金融というノンバンクの金融コンサルタント、ユン・ジョンハクである。ユン・ジョンハクは危機をいち早く察知して、「この国は破産します」と言い残し、高麗総合金融を退職する。そうして、誰もが信じようとしない国家破産の危機をチャンスに変えようと、顧客とともに、ウォンと株の暴落に賭ける。そうしてまず、彼がしたことは、投資家の資金をすべて米ドルに換えることだった。
 その結果、この映画のなかでの勝者はIMFとユンだけとなった。つまり、米ドルへのシフト。それが最大の教訓である。そして、国家財政が破綻するような事態が目前に迫っても、国は国民に対してなにも情報を出さないということが、第2の教訓だ。
 この2つは、コロナ大不況が進むなか、心に刻んでおくべきだろう。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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