連載372 山田順の「週刊:未来地図」ロックダウンは効果がなかったのか? なぜ世界は 「コロナ放置政策」に転換し、株価は高騰したのか?(上)

 6月になって、世界中で経済再開が進んでいる。世界全体では、感染者数も死者数も増え続けているというのに、各国とも「もうこれ以上封鎖は続けられない」と、政策を大転換させたとしか思えない。日本も同じだ。東京ではまだまだ感染者が出ているが、今後、緊急事態宣言が再び出ることはないだろう。
 こうなってみると、3月から続いた「ロックダウン」はいったいなんだったのか?ということになる。単なる「集団ヒステリー」だったのだろうか? 株価も異常な高騰を続けている。なぜ、こんなことになったのだろうか?

「ロックダウン」「自粛」はなんだったのか?

 今月になってから、アメリカを見ても、欧州を見ても、もはや「コロナ禍」は終わったという雰囲気になっている。日本も同じだ。
 とくに、アメリカは、「フロイド事件」(警官による黒人暴行死)で全米にわたって大規模な抗議デモが続き、コロナなど吹き飛んでしまった感じだ。保健福祉省(HHS)は、「デモでコロナ感染が再拡大する」と警告したが、そんなことより「人種差別のパンデミックのほうが大問題だ」といった雰囲気である。つまり、人々は、コロナ対策で行動を制限され、自由を奪われた生活に対しても、怒りを露わにしたのである。
 政府も同じだ。もともとトランプ大統領はコロナを「ただの風邪だ」と言っていたこともあり、ロックダウンを早く解き、経済再開を進める考えだった。死者が11万人を超え、感染者が200万人に迫っていても、いまや無視する考えに転じたようだ。
 不思議なことに、最近は、あの  NIAID(国立アレルギー感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長も、あまり警告を発しなくなった。
 欧州諸国は、すでに段階的にロックダウンを解き、イタリアは夏のバカンスシーズンに向け、観光客を受け入れることを表明した。スペイン、フランス、英国も、段階的に国境を開けて、EU内の移動が解禁されるのが間近に迫っている。
 日本は、緊急事態宣言が解除されて以後、街にどっと人が出た。東京だけは感染者が出続け、「東京アラート」が点灯しているが、人々はほぼ無視している。コロナ禍を自身の選挙宣伝に利用し、「ステイホーム週間」だの「新しい日常」だのと言ってきた“学歴詐称”知事の言うことなど、もはや誰も聞かないといった雰囲気である。
 こうなると、3月、4月の「ロックダウン」「自粛」はいったなんだったのか?といった感じだ。

はたしてロックダウンは成功したのか?

 アメリカでも欧州でも、そしてアジアでも、この日本でも、3月から「ロックダウン政策」が取られてきた。そのおかげで、感染者数も死者数も減って、コロナ禍はようやく収まりつつあると考えられている。対策がほとんど取られてこなかったブラジルなど中南米諸国、アフリカ諸国、ロシアは例外と考えられている。
 しかし、この考えは正しいのだろうか?
 最近、ロックダウンは、「感染拡大抑止にほとんど意味がなかった」という声が出ている。
 たとえば、アメリカでは、各州でロックダウンを実施したにもかかわらず、顕著な感染者数と死者数の減少が見られなかった州がある。バージニアがその典型で、ロックダウン中にも感染者数はじわじわと増え続けた。それにもかかわらず、5月9日にロックダウンを解除したのだが、5月25日に、過去最大の患者数を記録してしまった。
 イリノイ、オハイオ、テキサスでも同じようなことが起こった。しかし、テキサスは6月3日から再開計画フェイズ3に入った。6月12日からは再開されたビジネスの人数制限は75パーセントまで緩和される。(編集部注:このコラムの初出は6月9日)
 日本の場合、感染者数の減少を、メディアは「自粛が成功した」「国民の努力のおかげ」と言ってきたが、これには科学的な根拠がない。自粛が成功といっても、それは欧米式の「外出禁止令」(stay-at-home order)より緩い政策であり、それが成功したとはとても言えない。まして、「努力すればウイルスが防げる」とは、単なる精神論、根性論にすぎない。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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