連載382 山田順の「週刊:未来地図」トランプが破壊する世界経済、日本もどん底に!「コロナ禍」はまだ序の口(上)

  このところ、世界はどちらに向かうのか?ということをずっと考え続けている。日本もそうだが、世界全体ではコロナ禍は収束に向かってはおらず、むしろ、日々、拡大している。そんななかで、経済再開の動きが進んでいるわけで、この状況が続くと今後どうなるのか?と、本当に気になる。
「楽観」と「悲観」が交錯するなかで、私のいまの見方は「悲観」だ。なぜなら、どう見ても「コロナ禍」はまだ序の口だからだ。それがまったくわかっていないのがトランプ大統領と日本政府だから、アメリカ経済は悪化の一途をたどり、日本もどん底に向かって進んでいくだろう。

「第1波」は拡大中、収束見通し立たず

 日本は、ここにきて東京の感染者数が急増し、政府も東京都も、そしてメディアも、相変わらず右往左往している。そうして、「夜の街中心」「若い人中心」「検査数が増えたから感染者数も増えた」などと言っているだけで、なんの対策も行われていない。となると、単純に考えれば、今後、感染者数はさらに増え続けるはずだ。
 では、世界はどうだろうか?
 ひどいのはアメリカだ。トランプ大統領はもはや「ウイルス無視」を決め込んだと言うほかなく、なにもしようとしない。最近は、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)所長のアンソニー・ファウチ博士を追放しようとしているようで、そうすれば問題が解決すると思っている。
 その結果、感染者数は336万人、死者数は13万7000人(7月12日)と、“世界一の感染大国”を独走している。なにしろ、フロリダ州だけで、1日の感染者数が1万5300人を超え、最多記録を更新し続けている。
 アメリカに続くのが、ブラジル、インドで、感染者数は日毎に増えている。また、過去60日間で、感染者数が激増している国には、メキシコ、南アフリカ、サウジアラビアなどがある。欧州各国はというと、英国、イタリア、スペインなどは減ってきたが、再拡大している国もあり、まだ予断を許せない状況だ。
 そこで、この状況をざっくりまとめてみると、世界全体では、毎日20万人以上の感染者が確認され、それとともに約5000人の人が死んでいる。この感染者数と死者数は今後も増え続けるはずで、第1波は収束に向かっていないばかりか、拡大の真っ最中。日本では「第2波か」という声もあるが、とてもそんな話ではないのだ。

「楽観論」は希望的観測に基づく呪術政治

 こんななかで世界、とくに世界経済はどうなっていくのか? と考えると、「楽観」と「悲観」の2つの見方が交錯している。
 「楽観論」というのは、放っておいても影響はない。そのうちコロナはインフルエンザと同じようになり、人々は「コロナ慣れ」して、経済は元に戻るというものだ。トランプ大統領はどうやらこの考えの持ち主で、自身の選挙のためにも2度と経済を止めない、ロックダウンのような馬鹿げたことはやらないと考えているに違いない。
 ブラジルのボルソナロ大統領は「パーフェクト楽観論」で、感染したにもかかわらず意気軒昂で、コロナをいまも「ただの風邪」として問題視していない。
 ならば、日本の安倍晋三首相はどうかというと、どう見ても楽観論だ。というか、彼には、定見、ポリシーというものがないので、成り行きに任せるしかない。「成り行き任せ」というのは、楽観論者でなければできないものだ。
 また、小池百合子都知事も、「都民ファースト」はポーズにすぎず、「百合子ファースト」だから、事態を「シッティング・オン・ザ・フェンス」(高みの見物)をしているだけの楽観論者だ。
 いずれにしても、楽観論には、科学的、疫学的な根拠はなく、データの裏付けもない。単なる思い込みか、そうなってほしいという「希望的観測」に基づいている。政治でいうと、古代の呪術政治だ。「神頼み」や「雨乞い」のたぐいで、日本でいうと、首相や大臣や知事などの協議は、「族長会議」「部族会議」のようなものだ。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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