連載383 山田順の「週刊:未来地図」トランプが破壊する世界経済、日本もどん底に!「コロナ禍」はまだ序の口(中)

「ウイズコロナ」の「ニューノーマル生活」

 というわけで、やはり「悲観論」になる。
 今日までさまざまなデータが公開され、知見も出揃ってきた。それらを検討すれば、どう見ても新型コロナウイルス感染症は「ただの風邪」ではない。また、インフルエンザと同じにしたくても、治療薬とワクチンがないので、いまのところそうはできない。
 そのため、感染者数や死者数などのデータを取っているわけで、それを見れば、世界はいまだに感染拡大中だ。
 つまり、もはや私たちは「ウイズコロナ」で生きていくほかなく、そのためには、マスク、ソーシャルディスタンスが必須で、集会、会食、接触を自粛する「ニューノーマル生活」を送らざるをえないのだ。
 しかも、そうしてもなお、時間とともに被害と影響は拡大していく可能性が強い。
 これに輪をかけるのが、各国の政策だ。トランプやボルソナロのような政策を取る、あるいは日本のように無策だと、被害はさらに大きくなる。経済もいくら回そうとしても、うまく回らない。

経済対策をすればするほど経済は悪化する

  現在、私がもっとも悲観的に見ているのは、このまま感染拡大が止まらないと、どの国も部分的にせよまたロックダウンをやり、第2、第3の追加経済対策を打たざるをえなくなることだ。
 アメリカも日本ももう第2弾まで予算を組んだ。英国は6月30日、「英国ニューディール」と銘打って、次の大型景気対策を決めた。ドイツも7月3日に、1300億ユーロの追加対策を決めた。
 コロナ経済対策というのは、ひと言で言えば、税金のバラマキで、追い込まれた産業、人々の救済策である。これでなんとかしのいでいこうというものにすぎない。
 つまり、経済を刺激する、景気をよくするという効果はほとんどない。
 日本の場合、7月22日から「GO TO キャンペーン」という観光業、旅行業を支援する経済対策が始まったが、これで、観光業、旅行業が復活するわけではない。ただの税金による支援で、これでコロナ感染が拡大してしまう恐れがあるので、現在、批判が集中している。
 しかし、こういった経済対策の根本的な問題点は、政府が経済に手をモロに突っ込んでしまうことにある。コロナがあろうとなかろうと、本来、政府は、特定の業界を支援してはいけない。なぜなら、そうすればするほど経済を悪化させてしまうからだ。

家賃補助、休業補償が飲食店をダメにする

 たとえば、日本の第2次補正予算では、目玉の一つとして、飲食店など家賃の支払いが困難な事業者へ最大600万円を支給する「家賃支援給付金」が決まった。また、今回の感染再拡大を受けて、東京都はこの家賃給付金に1カ月最大75万円を上乗せすることを決めた。
 さらに、「夜の街」対策として、感染者が発生したホストクラブなど接待を伴う店に対して市区町村が休業を要請する場合、都が協力金として1店舗50万円を補助することを決めた。
 飲食店の多くは、コロナ禍で売り上げが急減した。それで、倒産、廃業せざるをえないところまで追い込まれた。だから、こうした経済対策には、メディアも経済専門家も賛成し、「休業要請と補償はセットだ」という意見が主流になっている。
 しかし、感染拡大が続いて休業要請期間が延びる、あるいは、解除後に再度休業要請をするたびに、再度、補償できるだろうか?
 現在の状況で見れば、コロナ禍は終わる気配もなくずっと続いていく。ウイズコロナによるニューノーマル生活は、もしかしたら数年は覚悟しなければならないかもしれない。
 としたら、飲食店などへの客足は戻らず、売り上げも低迷し、結局は閉店や立ち退きに追い込まれる可能性は大きい。これは、観光業、旅行業にも言えることだ。イベント、エンタメ、スポーツなどの業界にも言える。
 ウイズコロナによるニューノーマル生活のなかでは、従来の産業をそのまま存続することはできないのである。
 飲食店の例に話を戻すと、これらの業界に対する補助は、結局は、これらの業界にニューノーマル対応を遅らせ、最終的に成長産業に切り替えるチャンスを奪う。補助金という名の経済対策によって、景気はますます悪くなるだろう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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