連載390 山田順の「週刊:未来地図」血迷った中国、愚かすぎる習近平: 世界を敵に回す「戦狼外交」の行く末は?(完)

現代中国を牽引してきた優れた戦略家たち

 中国共産党政権は別として、中国人を嫌う意味はまったくない。むしろ、知略を駆使して歴史を生き抜いてきた彼らは、敬愛すべき存在だ。
 現代史を振り返っても、毛沢東(マオゾンドン)以外は、優れた戦略家が中国を引っ張ってきた。毛沢東はとんでもない独裁者、つまり、中国の王朝史から見ると「暴君」だったが、周恩来は諸葛亮に匹敵する知将だった。彼が、キッシンジャーと結んでニクソン訪中を実現させ、米中国交回復を成し遂げなかったら、いまの中国はない。
 また、鄧小平が「白い猫であれ、黒い猫であれ、ネズミを捕ればよい猫だ」という現実主義から、資本主義を受け入れなかったら、同じくいまの中国はない。
 鄧小平は「韜光養晦」(とうこうようかい:才能を隠して内に力を蓄える)を中国の基本路線とした。そして、胡錦濤まで、中国の指導者はこの教えを守った。すなわち、国力が十分に整わないうちは、国際社会で目立ったことはせず、じっくりと力を蓄えておく。そうして機が熟してから覇権を求める。これが「韜光養晦」路線である。

“終身皇帝”習近平の支配はいつまで続く?

 江沢民は日本嫌いで、日本に対しては敵視策を取ったが、その一方で、アメリカに対しては努めて良好な関係を維持した。胡錦濤は、「全方位外交」を唱え、できるだけ中国の仲間を増やして、国際的地位の安定を図ろうとした。
 ところが、毛沢東信者の習近平は、こうした中国の生き方を一変させてしまった。かつての戦略的なしたたかさは消え失せ、カネと力を誇示して、他国を従わせるという短絡的な外交に転換してしまった。
 中国は本当にこれでいいのだろうか?
 日本人は心の底では中国が好きではない。これ以上、中国が台頭することを面白くないと思っている。だから、中国が「四面楚歌」に向かって突き進んでいると言うと、喜ぶ人間が多い。国益から見ても、中国の自滅は日本にとっていいことかもしれない。
 しかし、中国が完全に「四面楚歌」になる前に、習近平がなにかとんでもないことをやる可能性がないとは言えまい。
 トランプもとんでもない「暴君」だが、アメリカ国民は選挙で彼を葬ることができる。しかし、習近平は“終身皇帝”だから、国民の力で退場させることはできない。“終身皇帝”と言えば、ロシアのウラジミール・プーチンもいる。日本では、無能の安倍晋三首相がまだまだ居座っている。これで、コロナ禍が1年も2年も続くと考えると、憂鬱でたまらない。
 私たちは、本当にどうしようもない時代に生きているとしか言いようがない。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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