社会に出回るおカネの量で株価は決まる
一般的に信じられている見方は、景気がよくなると企業の利益が増え、それによって株式の価値が高まり、株価が上昇するというものだ。この見方は、どこも間違っていない。しかし、コロナ禍の現在は通用しない。
現在、通用するのは「異常な金融緩和でおカネが増え、それが株価を上げている」という、きわめてシンプルな理屈だけだ。
株式に限らず、あらゆるモノの値段を上げる要因は、つきつめれば一つしかない。社会全体に出回るおカネの量だ。
株式市場でも、一般の消費市場でも、そこに流れ込むおカネの量が一定なら、ある会社の株は上がり、ある会社の株は下がる。また、ある商品の価格が上がり、別の商品の価格が下がる、ということしか起こらない。ところが、流れ込むおカネの量が増えれば、どの会社の株も上がる。どんな商品の価格も上がる、ということが起こる。
全体としての株価、物価は上がっていくことになる。
流れ込むおカネには、増減がある。あるときは増加し、あるときは減少する。増加すると株価は上がり、減少すると株価は下がる。きわめて、当たり前の話だ。
ただし、上がったり下がったりは短期的なことで、長期的におカネが流れ込むことが続けば、株価は上がり続けることになる。
では、そのおカネはどこから来ているのか?
アメリカならFRB、日本なら日銀、EUならECBである。これらの中央銀行は、コロナ禍が起こってから市場最大規模の金融緩和を続け、社会におカネを提供し続けてきた。
つまり、おカネの量さえ増えていけば、実体経済がどんな停滞しようと、株価は上昇し続けることができる。
世界大恐慌は金融引き締めで起こった
「QUICK MONEY WORLD」という投資家向けのサイトに『私が、大恐慌に学ぶ金融相場の危うさ 株価が上がるホントの理由』(木村貴、2020/6/16)という、非常に参考になる記事がある。私は、この木村貴氏の書いたものをよく読む。啓発されることが多いからだ。
今回のこの記事では、木村氏は世界大恐慌がなぜ起こったのかを検証し、株価が上がるメカニズムをわかりやすく説明している。そこで、以下、世界大恐慌がなぜ起こったかの部分を、記事から引用させてもらう。
《米経済学者マレー・ロスバードの推計によると、1921年6月から1929年6月までの8年間で、米国の通貨供給量は61.8%増えた。年7.7%の高い伸びだ。これが1920年代の空前の好景気と株高を支えた。ところが8年間の最後の半年
(1929年1〜6月)だけ見ると、通貨供給量の伸び率は年0.7%と、その前の半年(5.2%)から大きく低下し、8年間で最低となった。これは米連邦準備理事会(FRB)が株式市場のバブルを警戒し、金融引き締めに転じたためだ。》
《FRB傘下のニューヨーク連邦準備銀行は1928年2月、それまで3.5%だった公定歩合の引き上げに着手し、1929年10月には6%にまで引き上げる。これを引き金として同月、ニューヨーク証券取引所で株価大暴落が起こり、世界は大恐慌に呑み込まれていく。》
どうだろうか?
大恐慌前まで、FRBは金融緩和し、市場に大量のドルを供給し続けたのである。その結果、株価は上がりに上がった。しかし、FRBが金融引き締めに転じたため、株価は暴落した。
つまり、ここから得られる教訓は、いずれ、世界の中央銀行が金融引き締めに転じたとき、いまの株価は暴落するという、極めて単純な話だ。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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