連載393 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍で経済はボロボロ。 それでも株価が高いたった一つの理由とは?(完)

リーマンと違って政府、中央銀行が助けてくれる

 現在のところ、FRBも日銀も、空前絶後の金融緩和を続けている。その結果、マネーストック(通貨供給量)は増え続けている。日本のマネーストックの伸び率は、史上最高を記録し続けている。日銀の黒田東彦総裁は、コロナ禍に対して「中央銀行ができることはなんでもやる」と言い、FRBのパウエル議長にいたっては、なんと「少なくとも2022年末までゼロ金利を維持する」と表明している。
 これでは、よほどのことがない限り株価は下がりようがない。
 リーマンショックは、不良債権の増加が引き起こした。デリバディブが進んで金融商品が複雑になり、リスクがどこにあるかわからなくなった結果だった。そのため、政府と中央銀行は市場を救えなかった。
 しかし、今回は、危機の内容がまったく違う。コロナ禍のため、政府自らが強制的なロックダウンを行い、経済活動をストップさせた。そのために、経済停滞が起こった。そして、それを回避するために、徹底した金融緩和を行った。つまりおカネを刷りまくって市場に供給している。

バブルは格言通り「幸福感のなかで消えていく」

 このことは、投資家から見ると、中央銀行がおカネを刷り続けてくれる。いくらでも刷ってくれる。コロナ禍が続く限り、政府と中央銀行が助けてくれるのだから、安心して株を買えるとなる。まさに、実体経済などどうでもいい「コロナバブル」が起こっているわけだ。
 となると、このバブルはやがて終わる。しかし、それがいつかはわからない。よって、それがわかるまでは株は売ってはいけないとなる。少なくともコロナ禍が収束に向かい、中央銀行が金融緩和を止める兆しがなければ、買い続けていい。安心して持っているべきだとなる。
 つまり、投資家にとっては、コロナ禍が収束しないほうがいいわけだ。
 そこで、私は思う。本当にこんな見方でいいのだろうかと——。どうも腑に落ちないのは、なぜなのかと——。 
 よく言われる「格言」がある。
「相場は悲観のなかに生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、幸福感のなかで消えていく」(テンプルトンの言葉)。この格言だけは、永遠の真理と思いたいが、どうだろうか。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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