連載397 山田順の「週刊:未来地図」「集団免疫戦略」は成功したのか? スウェーデンの現状から見た日本の今後(完)

スウェーデン人は要注意、旅行はノー!

 現在、感染拡大防止に成功した北欧諸国では、夏のバカンスシーズンに入り、人々が動き出している。第1波を乗り越えたので、ニューノーマルのなかで、夏休みを楽しもうとなっている。
 ノルウェーもフィンランドも、感染に注意をすれば国内ならどこにでも行ける。また、感染拡大が収まったと認定された国同士なら、自主隔離なしで出入国が可能になった。
 ノルウェーの場合、感染率が低い国であれば自主隔離なしで旅行が可能になった。 同様にノルウェーへの旅行者は、ノルウェー公衆保健研究所 が「感染率が低い」と認定したフィンランドなどの北欧諸国やEU諸国などからの入国の場合は、10日間の自主隔離を免除している。
 しかし、現在のところ、ノルウェーの保健局はスウェーデンに対してだけは「渡航注意」という赤色警報を出している。他の北欧諸国も同じだ。
 スウェーデン側は「同じ北欧なのにいじめではないか」と不満を表明しているが、認められていない。スウェーデン人は要注意なのである。
 スウェーデンはノルウェーより物価が安い。そのため、ノルウェーでは週末になると車で国境を超えた買い出しツアーが盛んだった。これは、スウェーデンにとっても、インバウンドが得られるので大歓迎だったが、いまは休止したままだ。
 結局、スウェーデンの集団免疫戦略は、得るよりも失うもののほうが大きかったと言えるだろう。

政府はこのまま無策「放置」でいくのか?

 現在の日本には、感染防止政策と言えるものがない。PCR検査も抑制され、いっこうに増えない。緊急事態宣言を出すべきという声が強いが、そうしても法改正しなければ強制力があまりないため効果は期待できない。そんななか、
「Go Toキャンペーン」だけが行われている。
 となると、これは戦略とは言えない集団免疫獲得政策であり、新型コロナウイルスを放置したままにする「放置政策」でもある。ともかく、国は「死亡者数も増えていないので、医療崩壊を起こさないようにはするが、他にはなにもしない」と言っている。今日まで、そういうメッセージを出し続けている。
 はたして、これで、感染抑止と経済が両立して、落ち着くところに落ち着いていくのだろうか? とてもそうとは思えない。
 スウェーデンを見ていると、日本はいまが瀬戸際に思える。思い切った感染防止策、つまり欧米のように第2波に対して再度のロックダウンをやる。そうして、2週間でいいから徹底してコロナを押さえ込む。
 これができないなら、もう「あとは野となれ山となれ」でなにもしないか、どちらかだ。
 日本の死亡者数の少なさの原因はわからない。しかし、これを神がかりと信じて、コロナを放置する。いまのところ、政府はこれをやっているとしか思えない。
 日本の年間死亡者数は、約137万人(昨年)である。1日平均4000人弱の人が死んでいる。現在、コロナによる死者は1日せいぜい数人で、ゼロの日もある。
 厚生労働省の統計では、昨年の1月から7月までのインフルエンザによる死亡者数は人口100万人当たり23.5。今回の新型コロナの人口100万人当たりの死者数7.94の2.95倍である。いまのところ、新型コロナウイルスの死亡リスクはインフルエンザよりも小さいことは確かだ。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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