日本に比べて迅速、的確だったコロナ対策
コロナ対策でも、日本は韓国に大きく遅れを取った。
8月以降、再び感染者数が増えて日本とは差がなくなったが、当初は日本の対策が霞んで見えるほど、韓国の対策は進んでいた。
それを可能にしたのは、デジタル社会の進展と、組織の高い機能性だった。それがPCR検査を徹底化し、ITを駆使したクラスター追跡を可能にした。
日本の保健所がファックスでデータを送っていることを知ったとき、私は慄然とした。それに比べて韓国の対応は、ITを駆使して迅速だった。だから、大規模な都市封鎖もしなくてすんだ。日本の対策は「人力対策」で、韓国の対応は「IT対策」だった。
テレワークとオンライン授業においても、日本は遅れていた。韓国の場合、仕事はすぐにテレワークに切り替えられた。教育現場も同じだ。韓国ではオンライン授業への移行で、日本のようにドタバタが起こらなかった。これは、会社、学校、家庭で、ネットワーク環境、PCなどの端末環境が整っていたからだ。
日本では、10年も前からITC教育が叫ばれていたが、いまだに黒板と紙の教科書とノートと鉛筆による“ガラパゴス授業”が行われていた。そのため、教師が慌てて、オンライン授業を習うことになり、生徒からバカにされるということが続出した。文科省も学校も時代に対応することを怠り、子供たちを「デジタル難民」にしてしまったのである。
韓国ドラマ『愛の不時着』に完全にはまる
今回のコロナ禍のなかで、韓国が日本より上だと感じたことはまだある。それは、世界的に大ヒットした韓国ドラマを何本か見たためだ。もっとも評判の高い『愛の不時着』を、当初、私はヒットしたというので後学のために見ておこうか程度の気持ちで見た。
ところが、見始めると完璧にはまってしまった。家内はテッシュペーパーを用意して涙ボロボロ、私も何度も目頭を熱くした。その結果、5日ほどで、全16話(1話約1時間半)を見終えてしまった。
韓国の財閥令嬢のヒロインが突風によるパラグライダーの事故で北朝鮮に不時着し、出会った北朝鮮のイケメン将校と禁断の恋に陥る。ストーリーは荒唐無稽だが、胸を打つ恋のリアリティがある。しかも、スケールが大きい。日本のテレビドラマなど足元にも及ばないと思った。
『愛の不時着』は、「ネットフリックス」(Netflix)で世界中に配信され、大ヒットした。つまり、ネットフリックスは韓国ドラマに投資価値があると判断して、徹底的に資金を出してきたのである。
日本のドラマは、テレビのワンクール(8〜10回)を大体1話45〜50分で制作する。1話あたりの制作費は3000〜4000万円が相場だ。一方の韓国のドラマは、大体1話1時間10分〜1時間30分でCMがなく、ほとんどが16話〜20話完結で、1週間に2話放送される。テレビ放映後、ネット配信する。そのため、制作費は1話あたり約2億円。日本のドラマの数倍だ。この資金をネットフリックスなどのネット配信大手が提供した。
韓国の文化、とくにポップカルチャーは、すでに日本を追い超している。今年、映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を受賞した。また、すでに音楽では、BTSのアルバムが「ビルボードHot 200」で1位を獲得している。これらはいずれも、日本がこれまで何年かかっても成し遂げられなかったことだ。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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