連載421 山田順の「週刊:未来地図」菅新内閣でさらに衰退確実! 女性差別をやめない限り日本は復興しない(中)

書き込みに溢れる男性たちの自己正当化

 老人ばかりの“シルバー内閣”は、高齢化社会になった以上、ある意味で仕方ないかもしれない。とくに政治は、権力闘争だから、政治家はいったん権力を握るとそれを手放なさなくなる。老人になればなるほど、その傾向が強い。

 しかし、老人政治家が国を大きく変革したり、復興を成功させたりした例はほぼない。

 そればかりか、第二次大戦後の世界では、女性政治家によって世界が変革され、人類社会が進歩した例のほうが多い。英国のサッチャー首相、ドイツのメルケル現首相などは、そうした女性政治家の人だ。つまり、人類社会が男女同権に向かったのは、発展のための自然の流れである。

 ところが、日本はこの流れに、男性たちが“堰”をつくり、流れを堰き止めている。

 このことは、今回、女性閣僚の少なさを記事化したメディアに対する書き込みや、ツイートに如実に現れている。書き込んでいるのは、ほとんどが男性で、以下のような意見が主流だ。 

《女性閣僚の数が話題になるが、大臣に足る能力を持っている女性議員が少ないから無理に大臣に登用する必要はないと思う。能力があれば年齢、性別は関係ないと思うので、入閣待機組とか華やかさとかで安易な登用はすべきではない》

《男女比率を気にしたいのはわかるが、それ以上にやはり実力で判断しないと意味がない》

《能力が高ければ全員女性でもいいし、男女比なんて本来は関係ない。女性が少ないのは有能な女性が少ないから》

《日本においては企業でも政治の世界でも、「大変かもしれないが責任ある立場で重要な仕事がしたい」という野心がある女性がそもそも少ない。いきなり閣僚の数で女性比率を出しても意味がない》

 これらは一見正しいことを主張しているようだが、私に言わせればクズ意見で、男性側が自己を正当化しているにすぎない。問題はここにあるのではない。

実力のある女性がいないというのは嘘

 日本の多くの男性たち、とくに中高年男性は、「実力で選んでいるのだから、女性が少ないのは当たり前」「実力がある女性がいないから仕方ない」と主張する。しかし、そもそもこの前提自体が間違っているのだ。

 なぜなら、本当に実力で選んでいたら、いまごろ、日本社会は、女性リーダー、女性管理職、女性議員ばかりになっていたはずだからだ。つまり、実力のある女性は、日本中に山ほどいる。

 2年前、東京医大で不正入試問題が発覚し、女子受験生が不利に扱われ、男子受験生が優遇されていた事実が判明した。東京医大では、女子に対しては一律に減点を実施していた。その後、厚労省が全国81大学を調査したところ、どこも同じようなことを行なっていた。

 つまり、初めから女性には門が閉じられていたのだ。

 かつて私が勤めていた出版社でも、入社試験をやれば、成績上位は女子がほとんどを占めた。筆記でも面接でもそうだった。だから、成績順に採用すれば、新入社員はみな女性になっただろう。しかし、実際は、多少成績が悪くても男子を採用した。男性には、初めから下駄を履かせていたからだ。

 これは、日本中のあらゆる組織で行われていることで、いまも変わらない。官庁も同じだ。つまり、日本では、よっぽど優秀でなければ、女性は社会に参加できないのである。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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