マンハッタン区で売春婦にエイズ治療を施した女医、ジョイス・ウォーラスさんが14日、心臓発作のため死去した。79歳だった。ニューヨークタイムズが27日、報じた。
ペンシルバニア州フィラデルフィア市生まれ。ニューヨーク市クイーンズ区で育った。ウォーラスさんが12歳の時、8歳の弟が白血病で亡くなると、医者になることを決意。ニューヨーク州立大学医療健康センターで医学を学び、1970年代、マンハッタン区グリニッジビレッジで開業。多くの男性の同性愛者を診察した。81年春には、カポジ肉腫の流行を報告。その年の7月に発表した論文で、カポジ肉腫と同性愛の男性の免疫不全症を関係付けた。さらに、静注薬物常用がエイズウイルス(HIV)蔓延につながることを突き止めるなど、エイズ研究、治療のパイオニアとして活躍した。
市内でエイズが流行し、20代の女性の主な死因の1つとなっていた90年代前半、ウォーラスさんはバンに乗り、売春婦にエイズの検査キットやコンドーム、食料や衣類を配って回った。また、麻薬中毒者向けに、注射針の交換プログラムを運営。ホームレスの売春婦にはシェルターに入るよう勧めた。マンハッタン区裁判所で、禁固刑の代わりに、売春婦にコンドームとエイズ予防に関する文書を与え、麻薬治療を行うプログラムを始めたのもウォーラスさんだった。「彼女たちは、私たちの責任。価値のない女性などいない」と、93年の雑誌インタビューの中で答えている。