世界から周回遅れのデジタルエコノミー
なぜ、日本はここまで順位を落としたのだろうか?
「世界競争力ランキング」の各項目を見ていくと、なんと「起業環境」や「国際経験」は最下位で、「ビジネスの効率性」と「デジタル技術」も驚くほど低い。日本の新規開業率は5%程度で、10%を超える欧米諸国に比べると圧倒的に見劣りする。
それをカバーしているのが、「携帯ネット契約」(1位)や「環境技術関連」(2位)といったインフラ面だが、上位評価はこれだけなのである。
結局、コロナ禍で露呈したデジタル化への対応への遅れが、2020年のランキングに大きく影響している。世界がデジタルエコノミーに転換していくなかで、日本は周回遅れ、いや、2週遅れになっているのだ。
IMDでは、「世界デジタル競争力ランキング」も発表している。それによると、1位はアメリカ、2位はシンガポール、3位はデンマークとなっている。日本は27位で、日本の上にいるアジアの国・地域は、5位香港、8位韓国、11位台湾、16位中国、26位マレーシアとなっている。
かつて、日本は世界一のエロクトニクス産業を持ち、「電子立国」と言われた。半導体で世界一となり、独自のOSも開発、PC、携帯電話でも世界をリードしていた。しかし、その多くは、いまや見る影もない。
以下、日本の転落状況(ものづくり敗戦)を、ざっと列記してみよう。
・半導体(DRAM:サムソン、SKハイニックス、マイクロンに大差負け。
・スマートフォン:サムソン、ファーウエイ、アップル、シャオミにボロ負け。
・液晶パネル:BOEなどの中国勢、LGなど韓国勢に大差負け。
・有機EL:サムソン、LGに大差負け。
・5Gインフラ:ファーウエイ、エリクソン、ノキアにボロ負け。
・太陽光パネル:中国メーカーがほぼ独占で完敗。
・ドローン:DJI(中国)の一人勝ちで、まったくかなわない。
・CPU:AMD、インテルの独走で入る余地なし。
・スマホOS:アンドロイド、iOSの独占状態。かつて独自OS開発したが、いまは開発の意思もなし。
それでも世界一はまだいっぱいある
ここまで並べると、日本の転落、ものづくり敗戦は確定的に思えるが、核心技術で見れば、まだそうとは言い切れない。日本のモノづくりには、まだ世界をリードする技術を失っていない分野がある。そこで、以下、思いつくものを書き留めておきたい。
たとえば、液晶パネルは出荷量では、いまは中国が世界一だが、「マイクロスフェア」と「導電性金具」の核心材料を提供できるのは日本企業だけだ。
また、精密機械をつくるための核心技術の「超精密研磨工程」は、日本企業とアメリカ企業がほぼ独占している。
「透過電子顕微鏡」は先端技術研究に使われる基本装備の一つだが、日本電子と日立、アメリカのFEIの3社だけが生産している。
ロボット生産は中国が世界一だが、中国には核心的なアルゴリズムがない。ロボットのアルゴリズムでは、日本のファナック、スイスのABBがリードしている。また、ロボットに使う「触覚センサー」は日本が独占している。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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