もつれにもつれたアメリカの大統領選挙ですが、ようやく終わりそうだ。すでに、民主党ジョー・バイデン候補の勝利宣言があり、あとはトランプ大統領がどう出るかですが、法廷闘争になっても逆転はありえない。
しかし、ではバイデンが本当に勝ったのか?トランプが負けたのか?というと、そうではないというのが、私の見方だ。なぜなら、バイデンは勝利宣言で、「私は“分断”ではなく“結束”を目指す大統領になる」と言わざるをえなかったから。アメリカの“分断”は続くのだ。
バイデンは本当に勝ったのだろうか?
11月7日、民主党ジョー・バイデン候補はついに「勝利宣言」を行なった。いつもの大統領選なら、負けたほうが「敗北宣言」を行い、それを受けて勝ったほうが勝利宣言を行う。そうして、紳士的かつ合法的にバトンタッチの手続きが行われる。(編集部注:このコラムの初出は11月10日)
しかし、今回は違った。選挙前から、トランプは「不法投票が行われる」と言い続け、実際、開票が始まるやいなや一方的に勝利宣言を行ってしまい、今日まで負けを認めていない。
とはいえ、共和党内でも“訴訟抗戦”には、ミット・ロムニー議員をはじめとして、反発の声が強い。また、あのCNNが、「メラニア夫人が負けを認めるように説得している」と報道する始末だ。
なぜ、トランプの“宿敵”のCNNがこんな報道をするのか? それは、トランプの内部関係者がわざとCNNに情報をリークし、トランプ自身に諦めさせようとしているからだろう。
ともかく、一般的に「勝手にほざいていれば」といった風潮になれば、いくらプライドが高いトランプといえども引っ込まざるをえない。
しかし、ではトランプが負けたかと言えば、そうとは言い切れないところに、今回の大統領選挙の本質がある。
なぜなら、トランプは「ポピュラーボート」(一般投票)で、過去最高の7100万票を超える票数を獲得したからだ。もちろん、バイデンも過去最高で、投票数は7500万票を超えている。
つまり、このことから言えるのは、トランプは負けてはいないし、バイデンは勝ってはいないということだ。はっきり言うと、2人とも負けたのであり、これによりアメリカ国民も負けたというのが、私の見方である。
「レッドミラージュ」から「ブルーシフト」
今回の大統領選は史上最高の投票率となった。その票のほぼ半分、47.7%をトランプが獲得したことに、私は素直に驚いた(ちなみにバイデンは50.6%)。トランプは惨敗すると思っていたからだ。
アメリカの主流派メディアの予測でも、トランプ支持は4割がせいぜいだから、一般投票でも「エレクトラルボート」(選挙人投票)でも大差で負けると思っていた。いくら、世論調査、メディアが外すとはいえ、今回ばかりは外さないだろうと思っていた。
ところが、開票が始まると、トランプは優勢。4年前の「番狂わせ」が再現される勢いだった。とくに、フロリダ、テキサスを獲ったときは、日本のメディアの多くが「トランプ大統領が再選しそうです」と報道したので、4年前の「デジャブ」だと思った。
しかし、その後、郵便投票が開いていくにつれて、バイデンが逆転。事前に言われたように「レッドミラージュ」(赤い蜃気楼)が「ブルーシフト」(青に移行)に変わっていった。しかし、それでも最後まで残ったペンシルベニア、ジョージアを見れば、その差はわずかだ。
つまり、トランプは僅差で負けたのであり、戦いぶりから言うと「大善戦」をしたことになる。これは、紛れもない事実だから、バイデン大統領の誕生を大喜びしている人々を見ると、首を傾げたくなる。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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