バイデン政権の閣僚人事がほぼ出そろった。そこで、現在の日本にとっての最大の懸念、「米中覇権戦争」はどうなるのか?を考えてみる。
なぜか、日本ではバイデン政権が「親中路線」「宥和政策」を取るという見方が主流だ。しかし、そんなことはありえないと見るべきだ。バイデン政権はトランプの対決路線を引き継ぎ、「中国の夢」を打ち砕く政策を取るはず。トランプがハードな対決路線なら、バイデンはソフトな対決路線になるだけだ。
バイデンは制裁関税や貿易合意を継続する
12月になって、バイデン次期大統領はメディアのインタビューをいくつか受け、対中政策に関して、同じ見解を繰り返し述べてきた。(編集部注:このコラムの初出は12月23日)
口火を切った「NYタイムズ」のインタビューでは、トランプ政権が中国に課した「制裁関税」や、中国と結んだ「第1段階の貿易合意」に関して「即座に動くつもりはない」と、その継続を明言。さらに、全体としての対中政策では、「アジアや欧州の同盟国と協議して対応を決める」と述べた。
続けて行われたCNNのインタビューでは、トランプ政権の対中政策を厳しく批判。「トランプの政策では真逆に向かう」と指摘し、「中国をコロナで罰するのではなく、中国が守らなければいけない国際ルールがあると言い続けることが大事だ」と述べた。
その国際ルールとは具体的になにを指すのかは言及しなかったが、「中国が従えば協調するが、従わなければアメリカは協調しない」と明言した。おそらく、貿易や国際取引のルール、人権と自由という民主主義のルールのことを言っていると思われる。
要するに、トランプ政権とはアプローチは違っても、中国とは対決していくと、バイデンは示唆しているわけだ。
副大統領カマラ・ハリスは人権弾圧を許さない
では、このバイデンの対中政策をバイデン政権の閣僚たちは、実行していくだろうか?
今日までに発表された閣僚人事を見ると、外交と安全保障で対中政策を担う主要閣僚は次の5人だ。
副大統領:カマラ・ハリス(56)
国務長官:アントニー・ブリンケン(58)
国家安全保障問題担当補佐官:ジェイク・サリバン(44)
USTR代表(通称代表):キャサリン・タイ(45)。
国防長官:ロイド・オースティン国防長官(67)
このうち、カマラ・ハリスについては、このメルマガですでに述べたように、いくら民主党左派とはいえ、そのバックグランンドからして、中国に対して宥和的になるとは思えない。夫はユダヤ人の弁護士であるし、母の出身はインドの上位カーストである。さらに、サンフランシスコが地元だから、近年、金持ち中国人留学生が激増してカリフォルニアの大学が堕落した状況をよく知っている。シリコンバレーには、留学生や研究者に扮した中国のスパイが大量にいることも知っている。
安全保障問題は別として、中国のウイグルやチベット、そして香港で行っている「人権弾圧」については厳しく批判するだろう。彼女が中国と妥協することはありえないと思われる。
では、カマラ・ハリスと同じように、対中対決姿勢を取る閣僚はいるだろうか?
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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