外交を担う2人はオバマ政権時のバイデンの側近
残念ながら、まだ未知数、中国とそこまで厳しく対決しないかもしれないと言われているのが、外交を担う国務長官に指名されたアントニー・ブリンケンと、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に指名されたジェイク・サリバンだ。
オバマ政権の8年間は、対中国政策で言うと、「中国を助長させた8年間」だった。後半、オバマは中国の野望に気づいたが、習近平はすでに覇権主義を打ち出し、「一帯一路」「中国の夢」の実現に向けて邁進していた。
そんなオバマ政権で、ブリンケンとサリバンは当時副大統領だったバイデンの側近だった。ブリンケンは安全保障問題担当補佐官や大統領副補佐官を歴任し、今回の大統領選でもバイデン陣営の外交政策顧問を務めた。また、サリバンはバイデンの補佐官を務め、今回の大統領選でも政策顧問として関わった。
したがって、その外交姿勢が変わらないとすれば、中国に対して強硬路線を取らないだろうと、日本の保守派は気を揉んでいる。
実際、ブリンケンは指名された後の記者会見では、「中国との関係を完全に断ち切ることは非現実的だし、かえって逆効果だ」と発言したうえで、国際協調路線を打ち出している。
すなわち、彼はこう言った。
「アメリカには他国との協力が必要だ。アメリカには困難に立ち向かうために各国をまとめる力がどの国よりもある」
ブリンケンは中国包囲網の構築を目指す
ブリンケンはニューヨーク出身のユダヤ人。父親はクリントン政権でハンガリー大使を務めるという外交官一家に育ち、ハーバードを経て、コロンビアのロースクールでJDを習得した。1993年から国務省に勤務し、当時のクリントン大統領のスピーチライターも務めた。その後、上院外交委員会のスタッフとなり、バイデンと関わるようになった。
オバマ政権での彼の外交的成果は、ロシアによるクリミア併合への経済制裁、イスラム国掃討への国際連帯づくりアジア太平洋地域に外交・経済戦略の軸足を移す「リバランス政策」の主導などである。つまり、これらのアプローチを中国に対して行えば、宥和路線はありえない。
彼は、トランプ外交を批判したが、批判の矛先はそのやり方だった。「トランプ外交はロシアや中国のような専制国家を利しただけだった」「プーチンに甘すぎた」と言うのだ。ただし、「中国との完全な関係断絶論は非現実的であり、かえって逆効果になる」と主張する。
では、まずなにをしていくのか?
考えられるのは、同盟国による中国包囲網の構築だ。そのために、トランプが打ち出した同盟国、すなわちドイツや日本などに対する「安全保障代」(みかじめ料)増額の要求は引っ込めるだろう。これは、日本にとってはいいことだ。
中国嫌いのヒラリーの補佐官だったサリバン
サリバンも白人エリートである。ヴァーモントの出身で、ミネソタのミネアポリス育ち。イエールのロースクールでJDを習得し、ミネソタのエイミー・クロブシャー上院議員の顧問弁護士となり、政治の世界に入った。バイデンの側近になる前は、オバマ政権で国務長官だったヒラリー・クリントンの下で国務長官副補佐官を務めている。
彼の中国観ははっきりしないが、中国の人権侵害を非難したことがあり、また、ヒラリーは夫ビル・クリントンと違って大の中国嫌いだったから、その影響を受けている可能性がある。とすれば、宥和路線は取りようがない。
いずれにしても、白人エリートの一般的な傾向として、力をつけて小生意気になったアジア系の人間は好かない。中国はかつて貧しかったので、白人の左翼は中国人に対して同情を寄せた。戦前の名作、パール・S・バックの『大地』は、まさにそうした中国人観の作品だ。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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