接種が順調に進めば「集団免疫」はできる
その結果、日本政府は、ファイザーから今年6月までに1億2000万回分(2回接種が必要なので6000万人分)の供給を受けることになっている。また、モデルナから9月までに5000万回分(2500万人分)、アストラゼネカからは今月以降1億2000万回分(6000万人分)の供給を受けることになっている。
以上を合計すると、2億9000万回分(1億4500万回分)となり、日本の人口1億2600万人を上回る。となれば、順調に接種が進めば、日本は「集団免疫」を獲得できる。集団免疫論では、少なくとも人口の7割が必要とされる。
なお、接種の順番は、次のように原案化されている。
▽医療従事者(400万人)
▽65歳以上の高齢者(3600万人)
▽基礎疾患のある人(820万人)
▽高齢者施設で働く人(200万人)
▽60〜64歳の人(750万人)
*ちなみに、国内のワクチン開発は、アンジェスと塩野義製薬が治験を実施中だが、KMバイオロジクスや第一三共、IDファーマは遅れていて、治験に入るのは3月ごろという。
接種には問題が続出、日本は大丈夫か?
このようにワクチンは確保できたが、いざ接種となると、そのハードルは高い。
アメリカの例を見ると、アメリカ政府はワクチン接種開始の1カ月間で、2000万人の接種を予定していた。ところが、1月3日のCDC(疾病対策センター)の発表によると、ワクチンは全米に約1300万回分が配布されたが、422万5756人しか接種を受けられなかった。目標を大幅に下回ったのだ。
その原因は、「NYタイムズ」などの報道によると、東部を寒波が襲ったこと、接種する病院側に体制の不備があったこと、また、ファイザー/ビオンテックのmRNAワクチンはマイナス70度という「極低温」で扱う必要があるため、取り扱いに手間取ったことなどがあるという。
アメリカでは、病院以外にCVS(最大手の薬局チェーン)などで、インフルエンザなどのワクチン接種ができる。連邦政府はコロナワクチンも同じように体制を整えるという。
出遅れを1日も早く取り戻し、ワクチンが行き渡ることを目指している。
では、日本はどうか? アメリカと同じようなことが起こることが懸念されている。
最大のハードルは、極低温保存だ。まず、海外の製造拠点から国内へのコールドチェーン(低温物流)を確立しなければならない。続いて、国内での保管をどうするかという問題がある。加藤勝信官房長官は「マイナス70度程度で保管可能な冷凍庫3000台を確保している」と述べたが、それをどこに設置するのかは未定だ。さらに、病院で接種するとしたら、大病院は別として街のクリニックでできるのかという問題もある。
欧州では、ドライアイスを使う極低温の「保冷箱」を開発したが、日本はどうするのだろうか?
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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